金価格が上昇を続けています。NY市場では10月30日に1オンス2,800ドルの最高値をつけ、東京でも10月31日に1グラム1,500円を超えました。直近の政治イベントや世界情勢を踏まえて、今後の金価格の上昇余地を探ってみます。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年11月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
上昇が続く金(ゴールド)価格
金価格が上昇を続けています。
NY市場では10月30日に1オンス2,800ドルの最高値をつけ、東京でも10月31日に1グラム1,500円を超えました。ウクライナやイスラエルの戦乱が絶対的価値を持つ金への需要を高め、欧米が金利を下げ始めたことで、金利のつかない金の相対的な不利が後退していることもあります。
その一方で、米大統領選挙でトランプ氏が再選されれば、戦乱は早期解決を豪語しています。戦乱リスクが後退すれば金需要も低下します。
また金利が低下してもその半面でインフレも低下し、ペーパーマネーの復権、金離れも考えられます。金銀価格比は一時の90倍から80倍強に低下しています。
これらから金価格の上昇余地を探ってみます。
最高値を更新中
金価格は冒頭にみたように海外価格(ドル/トロイオンス)でも国内価格(円/グラム)でも過去最高値を更新しています。
この価格上昇過程を見ると、通常の「常識」と乖離した動きもみられます。例えば、絶対的な価値を持つ金は、ペーパーマネー(主にドル)の裏返しの動きと見られています。つまり、ドルの価値が下落すれば金価格が上昇、ドル金利が高いと金は売られ、低金利なら金が買われます。
ところが、このところの金価格の上昇は、これら「常識」に反するもので、つまりドル高の中でも金が買われ、欧米の金利高の中でも金価格は上昇しました。さすがに欧米金利はやや引き下げられましたが、ここまで「常識」を上回る大きな金買い需要をもたらした要因が2つあります。
1つは中国による金買いです。もう1つは、地政学的なリスクがペーパーマネーから絶対的な価値を持つ金にシフトしていることです。