2024年アメリカ大統領選挙が11月5日(日本時間11月6日)に迫るなか、民主党・共和党それぞれが敗北時に検討しているとされる“禁じ手”が注目されている。トランプ・ハリス両陣営が合法的手段を越えた実力行使を視野に入れるなか、国を揺るがす混乱が生じる可能性が浮上。2021年1月6日に起こった連邦議会議事堂乱入事件を越える大混乱になることは避けられない。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年11月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ハリスが敗北した場合の禁じ手
米大統領選挙が間近に迫っている。ハリス陣営もトランプ陣営も全力で最後の選挙キャンペーンを行っている。米有カシンクタンクの「ブルッキングス研究所」は、「大統領選の最重要州で大接戦」という記事を発表し、7つある激戦州のひとつで、19人という選挙人数をかかえるペンシルバニア州が、大統領選挙の勝敗を決することになるだろうと予測した(原稿執筆時点:2024年11月1日)。
また、合法的予測市場である賭けサイト「カルシ(Kalshi)」では、ペンシルベニア州の勝率が、トランプ58%、ハリス42%とトランプが圧倒的にリードしている。さらに、9つの世論調査機関の平均値をリアルタイムで掲載している「リアルクリア・ポリティックス(Realclearpolitics)」によると、トランプはハリスとのリードを広めており、全国の支持率ではトランプが0.8ポイントほどハリスをリードしている。そしてトランプは、7つの激戦州すべてで、支持率がわずかながらハリスを上回っている。
トランプとクリントンが争った2016年の大統領選挙では、全国の得票数ではクリントンが300万票ほどトランプを上回ったものの、選挙人の獲得数ではトランプが上回り勝利した。情勢に変化がなければ、2024年の選挙では、トランプが全国の総得票数でも、選挙人の獲得数でもハリスを上回り、勝利する可能性がある。「リアルクリア・ポリティックス」のデータに基づき、50州すべての選挙人獲得数をシミュレーションしているユーチューブのチャンネルは、ハリスが242人、トランプが過半数の270人を上回る292人の選挙人を獲得し圧勝するだろうと予測している。
トランプは民主主義否定の独裁者?ハリス陣営のネガティブキャンペーン
このような状況なので、民主党の危機感は非常に大きい。なんとしてでもトランプの優勢を逆転するためのキャンペーンに力を入れている。それは、トランプを民主主義を否定する独裁者として、トランプを印象づけるネガティブキャンペーンだ。
前トランプ政権のホワイトハウス首席補佐官を務めた退役海兵隊大将のジョン・ケリーは、29日に掲載された一連のインタビューで、前大統領は「一般的なファシストの定義に当てはまる」と述べ、ヒトラー率いるナチスドイツの将軍たちの忠誠心についてトランプが評価していると語った。
これは、トランプ前大統領のホワイトハウススタッフが大統領職をどう捉えているか、また政権に返り咲いた場合にどのような権力行使を行うかについて、前大統領の側近が警告を発した最新の一例である。
ファシスト的発言に加えケリーは、「ニューヨーク・タイムズ紙」に対し、前大統領は「間違いなく独裁者的な手法を好む」と語った。またケリーは、「アトランティック誌」に対し、トランプが第二次世界大戦中にヒトラーのナチス将軍たちがドイツの独裁者に対して示したのと同じ敬意を軍人たちから示してほしいと語ったことを認め、そのときの様子を語った。
民主党はすぐにこの発言に飛びついた。ハリスの副大統領候補であるミネソタ州知事のティム・ワルツは、ウィスコンシン州での集会で、ヒトラーの将軍たちに関する報道された発言について、「皆さん、ガードレールはなくなりました。トランプは狂気へと向かっています。米国の元大統領であり、米国大統領候補がアドルフ・ヒトラーのような将軍を望んでいると言っているのです」と述べ、トランプは独裁者だとして、その危険性を強調した。
また、民主党左派の重鎮、バーニー・サンダース上院議員もことあるごとにインタビューやスピーチで、トランプは合衆国憲法を無視するファシストの独裁者だとしてトランプを強く非難している。これはハリスも同様だ。あらゆる機会でトランプをファシストの独裁者だと非難し、トランプが当選すると、合衆国憲法を無視する大統領独裁制になると、その危険性を強調している。