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トランプ政権で株価暴落?バフェットが株を売り現金を蓄える理由。長期投資家は真似するべきか?=栫井駿介

アメリカの大統領選挙が行われ、トランプ氏が勝利しました。それを受けて日本の株式市場も大きく盛り上がっています。トランプ氏は本人も大富豪ですし、株価を上げた方が支持率も取れるし自分も潤うということで、株式市場にとっては好感されることです。実際に前回トランプ氏が大統領を務めていた2016年~2020年には株価が上がっています。一方で気になるのがウォーレン・バフェットの動きです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

バフェットは暴落を予期している?

バフェットは今、株をどんどん売って現金比率を高めています。
特にポートフォリオの筆頭銘柄であるAppleの株を、2024年の上半期までに半分に減らしました。
そこから直近にかけての3ヶ月でさらに4分の1を売り、ポートフォリオの50%を占めていたApple株が今では20%くらいになっています。

代わりに何かを買うということはなく、基本的に現金で持ち続けているということになります。

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出典:日本経済新聞

現金だけでなく米国債も持っていて、債務不履行の可能性が限りなく低い米国債が今利回り5%くらいあるのはかなりおいしいと考えているのではないかと思います。

 

とはいえこれだけ株を売るということは、バフェットは何かを警戒しているのではないかとも思えます。

バフェットといえばやはり長期投資家であり、一度買った企業はそのまま持ち続けることを信条とする投資手法で知られていて、実際にその手法で実績をあげてきました。

一方で、バフェットはこれまで多くの株を売ってきています。
どういった株を売るかというと、一つは、まず買って様子を見て、違ったと思えば割とすぐ売っています。
直近ではTSMCもそうでしたし、少し前ではIBMもありました。

つまり、バフェットも買った時点ではその銘柄が未来永劫持ち続けるような完璧な銘柄だとは思っていなくて、買ってからいろいろ見て判断しているということです。

 

あとは、やはり株が高くなりすぎた時には売っています。

具体的に言うと、かつてペトロチャイナという中国の石油会社の株を持っていました。
2000年前半にバフェットが投資をして、その後石油価格が上がる時期がありました。
しかもその時は中国の経済は絶好調で、ペトロチャイナの株価は大きく上がりました。

しかし、バフェットはさすがに上がりすぎだと判断し、やがて全て売却するという動きに出ました。
その後ペトロチャイナの株価はズルズルと下がり、今では目もあてられないような状況となっています。

これを見ると、もしかしたらAppleも割高すぎると思っているのではないかと考えられます。
さらに言うと、現金がこれだけ積み上がっているということは米国株全体が割高だと思っているのではないかという疑念も沸きます。

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出典:multpl

それを示す一つの指標としてこのShiller PE Ratioというものがあります。
過去10年間の1株あたりの純利益の平均値をインフレ率で調整した実質純利益でPERを計算するというものです。
PERは毎期の利益によって計算するので景気によってぶれやすいですが、それを均して長期間で見て長期間の純利益に対して今の株価が割安か割高かを示すものです。
これを見ると、一時期の異常値のようなものに惑わされることなく今の株式市場が割安か割高か判断することができます。

2024年の時点で36.83倍と、過去と比べてかなり高い水準となっています。

 

大統領選に向けて、株式市場の期待値が非常に高まっていた状況となっています。
トランプ氏が当選するのではないかという期待が高く、この1年のダウ平均株価も非常に好調です。

大統領選挙の年は、候補者のリップサービスなどもあり株価が上がりやすい傾向があります。

株価が上がっている一方でバフェットは慎重になっているように見えますが、このギャップが整合性を持ってきているのではないかと思います。
大統領選下での株価上昇というものがファンダメンタルズ的な裏付けがあるかというと疑問で、むしろ足元では景気が悪化するのではないかという指標も出てきています。
ずっと強かった個人消費が弱まってきていて、コロナ禍での補助金などの貯金が尽き始めていているのではないかと見られます。

となると、大統領選を終えた2025年の株価は大丈夫なのだろうかと思ってしまいます。

 

バフェットも売った理由については何も言っていなくて、Appleについて何か警戒しているというよりは、他の理由が考えられます。

一つはポートフォリオのリバランスです。
Appleが大きく成長してきたので、Appleの占める割合が大きくなりすぎたのです。
このまま持っていると、Appleの株価が下がった時にはポートフォリオ全体が大きく下がってしまうので、リスク管理としては望ましい状態ではありません。

また、バフェットは94歳であり、いよいよ次の世代に引き継ごうとしています。
1銘柄で50%以上あるポートフォリオというのは異常な状態で、バフェットなら管理できるかもしれないですし、下がったとしても批判を受けるだけのある意味のカリスマ性もありますが、引き継いだ後の人がそういう状況となると大変です。
だから今のうちに分散を進めているのではないかという見方もあります。

 

一概には言えませんが、新たに買うような状況でもないというところでもあります。

Next: 長期投資家がやることは「良い企業を買って持ち続ける」だけ

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