高配当株とREITはどちらもインカムゲインを目的とした投資対象として注目されています。特に、REITの基準価額は2021年に2,200円を記録した後、24年12月現在で約1,600円まで下落し、約30%の下落を見せました。この下落に伴い、利回りは5%を超える水準まで上昇しています。このように価格下落によって利回りが高まったことで、REITへの投資妙味が増していると考える方もいるかもしれません。

東証REIT指数 月足(SBI証券提供)
この状況を受けて「今は高配当株よりもREITが魅力的なのではないか?」と考える方もいるでしょう。この記事では、高配当株とREITの特徴を比較し、配当投資のメリット・デメリットを整理していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
配当投資のメリット・デメリット
高配当株やREITは安定した収益を得られる点で、多くの投資家に支持されています。まずは、以下に具体的なメリットを挙げます。
<メリット1:安定的な配当収入が得られる>
「高配当投資」という言葉は広く浸透しているものの、その明確な基準は存在していませんが、過去の水準を踏まえると、配当(分配金)利回り3.5%以上あればそこそこ高いと言えそうです。
その中でも高配当株は、特に金融業界や通信業界など、安定的な利益を出す企業が多い点で注目されています。配当の原資は企業の利益であり、こうした事業の安定性が配当の安定性に直結します。
REITの場合も、不動産賃貸収入が主な原資となるため、安定的な配当を得やすい仕組みと言えます。
<メリット2:配当が増える可能性も>
REITや株式は、保有しているだけで年に1~2回の配当金を受け取ることができます。
さらに、いずれも配当金を増やす「増配」を実施すれば、同じ保有株数でも受け取る配当金が増えます。
特に「累進配当」を掲げる企業では、原則として前年以上の配当金を目指すため、長期保有することで配当利回りが向上する可能性があります。
ここからは配当投資のデメリット、注意点を考えます。
<デメリット1:減配リスク>
基本的には安定している配当株やREITですが、配当が減る「減配」のリスクもあります。
事業環境が悪化すれば、収益が減少し、配当金の減額や中止に至る可能性があります。例えば、2020年にコロナの影響を受けた日本たばこ産業(JT)は上場以来初の減配を発表するなど、安定事業に見えても減配が起こることもあるのです。
一方、REITにおいても、不動産の稼働率が下がったり、賃料が低下すれば、収益が悪化する可能性があります。特に、ホテルを中心としたREITは、コロナ禍ではホテルの需要が減少し、不動産の価値や賃貸収入が減少しました。これにより、大幅な分配金の引き下げが発生しました。
<デメリット2:キャピタルゲインの期待値は低い>
高配当株は成熟産業であることが多く、株価が大幅に上昇することは稀です。
また、配当金は企業の「将来利益の先食い」と呼ばれることがあります。これは、配当金として現金を投資家に還元することで、企業が新たな成長投資に使える資金が減少するためです。
その結果、成長力の観点で見た場合、高配当株は一般的に期待値が低いとされています。
一方、REITについても成長力には制約があります。REITは「物件の開発行為が禁止」という規制のため、不動産デベロッパーのように新たな物件を建設して収益を拡大することができません。既存の不動産を取得し、管理・運営するにとどまるため、保有物件の付加価値を大きく向上させることは難しいのです。
さらに、REITには「利益の90%を投資家に還元すれば法人税が免除される」という特別なルールがあります。これにより、収益の大半が配当に回される一方で、内部留保が少なくなり、資産規模の拡大や新たな収益源の確保が難しくなります。
この点も、REITの成長力に限界を与える要因となっています。