ある証券会社のYouTubeでアナリストの方が「INPEXは買いだ」と言っていて、INPEX<1605>に注目している個人投資家が多いようです。また「INPEXは長期投資としてはどうなの?」という声が多く寄せられています。つばめ投資顧問は、INPEXへの長期投資はリスクが高いと考えています。なぜならINPEXは、割安であるにもかかわらず株価が下がっているという危険な兆候がでているからです。そこで今回は、つばめ投資顧問がなぜINPEXは割安なのか、INPEXにはどんなリスクがあるのかについて解説していきたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
INPEXはなんの会社?
INPEXは世界各国に出向いて、石油や天然ガスを採掘して国の資源確保を目指している会社です。
権益を確保して、安定的に日本へエネルギーを供給する国策上も重要な企業だといえます。
なお、日本のエネルギーの約1割をINPEXが仕入れています。
INPEXは石油や天然ガスを取り扱っているため、業績や株価は資源価格に影響を受けやすいです。
原油価格が高いほど、INPEXはお金を稼ぎやすいといえます。
原油価格の推移をみてみましょう。
現在は、2022年のピークから少し下がった程度で原油価格は高い水準にある状況です。
これを踏まえて、次は株価を見てみましょう。
INPEXの株価の推移

INPEX<1605> 週足(SBI証券提供)
2022年にロシアのウクライナ侵攻によって資源価格が上昇し、業績もよく株価が上がってきていました。
そこから2024年のはじめまで、上昇しています。
ところが4月半ばから息切れして、2025年2月現在まで下落しています。
株価が下がったとはいえ、2022年の高値圏ではあるためひどく下げているわけではありません。
ですが、直近ではずっと高値を切り下げていてどこまで下落するのかといったところです。
原油に関連する、いま世界で起きていること
原油価格は高くINPEXにとっては追い風のはずなのに、株価が下がっていることに疑問がでてくると思います。
そこで、原油にまつわるいま世界で起きていることについてみていきましょう。
<アメリカが石油を増産>
アメリカではトランプ氏が大統領に返り咲いたため、今後さらに石油を採掘していくことが期待されています。
バイデン政権下では脱炭素化という環境問題対策のため、二酸化炭素を排出する石油の生産、消費を削減する流れが強く石油採掘を抑えていました。
ですが、トランプ大統領は石油を使って産業を活性化させる方針ですので今後石油を増産していくことが考えられます。
アメリカが石油を増産すると、供給が増えるので価格が下がります。
すると、原油価格に大きな影響を受けるINPEXはこれから厳しくなることが考えられるでしょう。
<中国の景気悪化>
同時にいま世界で起きているのは、中国の景気悪化です。
中国の景気が悪化すると、モノが生産されにくくなることから石油の需要が少なくなります。
すると需要と供給のバランスが崩れてしまうため、原油価格は下落していくことが想像できるでしょう。
このような状況だと、INPEXのような原油価格に業績が左右される株は買いにくくなります。