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食料品の消費税ゼロで飲食店が悲鳴…なぜ倒産ラッシュが?消費行動の激変が背景に=原彰宏

飲食店にとって、テイクアウト導入などの業態変化で軽減税率導入の波を乗り越え、じっと耐えることでコロナ・パンデミックによる行動制限の逆風を乗り越えたにもかかわらず、今度は、どうしようもない「10%」もの価格差を強いられるのですよ。

この外食を控えるという消費者の行動が、飲食店等を“潰す”のです。

それは理解されているのでしょうか。コロナの行動制限のときもそうです。いったん離れた客足は、以前のようには戻っては来ません。

ラーメン屋さんや定食屋さん、蕎麦やさんなどの個人経営の飲食店は、いったいどうすればよいのでしょうかね…。

日本社会では、雇用者(サラリーパーソン)の割合が圧倒的に多いです。約87~89%が雇用者であり、自営業者は約8~11%程度とされています。

有権者としてみたならば、選挙での票を考えると、食事を提供する側を守るよりも、家庭の食卓を守るほうが効果的ですからね。

「食料品消費税ゼロ」の制度建付けについて考えてみる

通常の消費税の考え方からおさらいします。

生産者から卸売業者を経て小売業者を通じて消費者が食料品を購入するプロセスを、イメージしてください。

現在の消費税制度には「仕入税額控除」という概念があります。売上時に客から受け取った消費税から、仕入や経費で支払った消費税を引いて差額だけ納税するというものです。

上記のプロセスだと、卸売業者が小売業者に「1,100円+100円」で野菜を販売したとしましょう。

そのとき卸売業者は「100円」の消費税を小売業者から受け取ります。その野菜を生産者から「800円+80円」で仕入れたとしたら、卸売業者が収める消費税は「仕入税額控除」で「 20円(100円 ー 80円)」になります。

小売業者は、消費者に「1500円+150円」で販売したとしたら、仕入額が「1000円+100円」ですので、消費税は「50円(150円ー100円)」になります。

消費者の購入額は「1500円+150円」、消費税を取り出せば「150円」になります。これは「生産者の消費税(80円)+ 卸売業者の消費税(20円)+ 小売業者の消費税(50円)」の総額になります。

これが今の実際の取引で行われている消費税の考え方です。まずはこの「仕入税額控除」の仕組みを理解してください。

「食料品消費税ゼロ」の制度においては、次の2つのプロセスがあります。
・非課税売上(取引自体は課税対象だが、特別に消費税を課さない)
・免税取引(取引自体が免税、つまり消費税がかからない)

どちらも消費税をゼロにするのですが、前者は、その取引は消費税課税対象のままで、税率を0%にすることで消費税ゼロを実現します。

この場合、仕入税額が“ゼロ”になるので、控除する消費税額がない、つまり、「仕入税額控除」は適用されません。後者は、取引自体が消費税課税が免税になっているわけで、「仕入税額控除」の適用は受けられます。

どちらも、取引自体に消費税がかからないことは同じです。

今回の「食料品の消費税ゼロ」が果たして「非課税取引」になるのか「免税取引」になるのかは、現状明らかにはなっていませんが、食料品という性質上、社会政策的観点からも「非課税取引」になる可能性が高いと言われています。

業者が求めているのは「免税取引」のほうです。

これを先程の、生産者から卸売業者を経て小売業者を通じて消費者が食料品を購入するプロセスを、イメージしてください。

まずは「非課税売上」について考えてみます。

卸売業者は、生産者から野菜を880円(消費税10%)で仕入れて小売業者に1,100円(消費税10%)で売る前述の例で考えてみましょう。

卸売業者が負担する消費税額は、「仕入税額控除」により、通常「100円 ー 80円 = 20円」のところ、小売業者への売上が「非課税売上」となれば、「食料品消費税ゼロ」における非課税取引の場合、小売業者に売ったときの「100円」の消費税は発生しません。

売上額は「1,000円」です。生産者から仕入れた際の消費税20円は、「非課税売上」適用の場合は「仕入税額控除」は適用されません。生産者から購入した際の消費税負担は精算されないのです。

この場合、卸売業者は消費税を収めることはないですが、売上利益が減ることになります。

今の消費税制度では、卸売業者が生産者から「800円 + 80円」で仕入れて、小売業者に「1,000円 + 100円」で売ると、販売利益は「1,000円 ー 800円 = 200円」になります。

「食料品消費税ゼロ」だと「仕入税額控除」が適用されないので、販売利益は「1,000円 ー 880円 = 120円」になります。

消費税は「100円 ー 80円 = 20円」納めますので、売上利益は「1,000円 ー 800円 = 200円」となり、手残りが「200円 ー 20円 = 180円」になります。

「食料品消費税ゼロ」だと、消費税はゼロですが、販売利益を維持させたいのであれば、小売業者への売値を上げることになります。

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