小売業者からの消費者価格も上がることになりかねません。
小売業者は、卸売業者から購入した野菜に対する消費税はなくなりますが、消費者価格が上がった場合、その分の消費税額は増えます。つまり、納める消費税額は“増える”現象が起きるということになります。仕入額が値上げになるのではないかという懸念があるのです。
次に「免税取引」について考えてみましょう。
「免税取引」では「仕入税額控除」は認められます。卸売業者は「免税取引」になるため、小売業者に消費税を付加することはできません。販売価格は「1,000円 + 0円」になります。
一方、生産者から野菜を「800円 + 80円」で仕入れたときの消費税「80円」は、「仕入税額控除」が適用になりますので、「0円 ー 80円 = ▲80円」となり、還付されることになります。
「輸出還付金」と同じ仕組みです。「輸出還付金」とは、海外への輸出取引を行う際に、国内で支払った消費税が、国から還付される仕組みです。輸出された商品は国内で消費されないため、本来消費税は課されません。そのため、輸出事業者は、すでに支払った消費税を国から還付してもらうことができます。
これがトランプ大統領が指摘する「非関税障壁」にあたるのではと言われています。
小売業者は、免税取引なので、販売に対しても仕入れに対しても消費税は免除となっているので、消費税額は「0円」です。
消費者に係る消費税は「生産者の消費税(80円)+ 卸売業者の消費税(▲80円)= 0円」ということになります。
小売業者が食料品を取り扱う業者、いわゆるスーパーなどはこのパターンでよいのですが、レストランや飲食店はどうなるでしょう…。
レストランや飲食店は、食料品を販売するのではなく、加工してお客様に提供しますので「食料品消費税ゼロ」の制度とはまったく関係ありません。
卸売業者が「非課税売上」であっても「免税取引」であっても、仕入れに関しては消費税はかかりません。
お客様に提供する料理等(売上)には消費税がかかります。「仕入税額控除」は適用されますが、控除される額が「ゼロ」なので、売上に対する消費税額は控除なしで精算されます。納める消費税額は大きく増えます。
スーパーと違って、販売売上に消費税は課せられ、納める消費税額は増えるということになるのです。
「仕入税額控除」が効かないことで、飲食店の利益が削られる感じです。
もちろん、飲食店が食材を仕入れる場合にも「非課税(=消費税ゼロ)」となるため、帳簿上“プラスマイナスゼロ”だというのもわかります。
でも、帳簿上の話と実際のキャッシュフローは別問題です。
一時的にも大きく現金がなくなることは、人件費払いや仕入先への支払いなどを考えると厳しいものがあります。
薄利多売の飲食業では、電気代や人件費の高騰に悩まされている中小の飲食店にとって、仕入控除が効かなくなるというのは大きなダメージであることは間違いありません。
ただでさえ原材料費や人件費が高騰している中ですら、個人経営の飲食店の多くは値上げに踏み切れずに苦しんでいます。
※参考:「食料品消費税ゼロ」でラーメン店が壊滅? 飲食店を潰しかねない非課税税制の「落とし穴」とは?(山路力也) – Yahoo!ニュース(2025年4月30日配信)
税制がややこしすぎる…
だいたい税制がややこしくなりすぎます。税は公平かつシンプルであることが望ましいです。
そもそも消費税そのものの是非の議論はどこへ行ったのでしょうか。
前述の指摘通り、消費税がかからない分、食事は家で済ませようということで、テイクアウトや弁当を買う、家飲みが増えるという流れが加速すれば、個人企業にかかわらず外食産業はさらに厳しい立場に追い込まれることでしょう…。 ※2025年5月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。 ※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年5月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。
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