いまのところ、イスラエルとイランの戦争の停戦は続いているようだが、この状況がどこまで続くか分からない。しかし、そもそも核兵器の開発は行っていないことがはっきりしているイランを、なぜイスラエルは攻撃したのであろうか?日本ではまったく報道されていない事実がある。これを詳しく紹介する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
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イスラエルがイラン攻撃に踏み切った本当の理由
そもそもなぜイスラエルは、核兵器の開発を行っていないことがはっきりしているイランを攻撃したのだろうか?
トランプ大統領は日本時間の24日、SNSへの投稿で軍事衝突を続けてきたイスラエルとイランが停戦することで合意したと明らかにし、それぞれが順次、戦闘を停止し、予定どおり日本時間の25日、戦闘が終結した。
ただイスラエル側は日本時間の24日午後、停戦が始まったあとイランから2回にわたってミサイルが発射されたと主張し、報復としてイスラエル軍がイランの首都テヘラン近郊のレーダー設備を攻撃した。
これに関連してアメリカのニュースサイト、「アクシオス」は24日、イスラエル当局者の話としてトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が電話会談を行った結果、イスラエル側は攻撃計画を大幅に縮小しレーダー設備1か所のみの攻撃にとどまったと伝えている。ただ、イスラエル国内ではイランへの攻撃が広く支持されているほか、ネタニヤフ政権はいかなる停戦違反に対しても断固たる対応をとるとしていて、停戦が守られるかは予断を許さない状況だ。
停戦までの動き
日本ではどのような経緯で停戦に至ったのか、あまり報道されていない。まずこれを最初に確認しておくべきだろう。
6月23日、トランプは突然とイラン攻撃に踏み切った。攻撃対象は「フォルドー」「ナタンズ」「イスファハン」の3つの核関連施設だ。B2戦略爆撃機7機に搭載された地下施設破壊専用の爆弾、「バンカーバスター」14発で地下80メートルにある「フォルドー」を攻撃し、中東に展開する米空母の巡航ミサイルで、「ナタンズ」と「イスファハン」を攻撃した。攻撃後、トランプは攻撃は成功し、イランの核開発能力は消滅したと宣言した。これに対しイランは報復として、カタールの米軍基地に向けてミサイル攻撃を行った。この直後、トランプはイスラエルとイランが停戦に合意したことを発表した。
しかし、アメリカの攻撃から停戦にいたるプロセスは、トランプ政権が巧妙に仕組んだやらせの芝居であることがいまは明らかになっている。まずアメリカのイラン攻撃だが、イランの核施設に与えた打撃は小さかった。イランは核施設から濃縮ウランなどを別施設に運び出しており、イランの核開発を数カ月程度遅延させる効果しかなかった。
またイランは、カタールの米軍基地を攻撃する前にアメリカに事前に通告していたので、人的被害はゼロであった。これに対しトランプは、イランに謝意を表している。
このような一連の過程を見ると、停戦への過程がトランプ政権が仕掛けた壮大な芝居であったことが分かる。トランプはイランの核開発能力が実質的に無傷であることを知りながら、「イランの核開発能力は消滅した」と宣言した。これは、イスラエルの目標が達成されたことにしてしまい、アメリカとイスラエルの面子を維持した。またイランは、事前にアメリカに通告して米軍基地攻撃をすることで、被害を最小限に止めた上で面子を守った。関係国が面子を守った上で停戦にこぎつけることに成功した。これで、イスラエル、イラン、アメリカの関係国すべてが勝利を主張できる。
このシナリオを考えたのは、政権内の「アメリカ・ファースト」派の代表であるJDヴァンス副大統領と、エルブリッジ・コルビー国防次官、そして本来は「ネオコン」寄りだと考えられいたルビオ国務長官であると見られている。