「モザイク」が予測した核兵器開発
そして、「パレンティア・テクノロジーズ」が開発した「ラベンダー」とならぶシステムが「モザイク」である。「ラベンダー」が個人を対象にしているのに対し、「モザイク」は「プレディカティブ・アルゴリズム」を用いて国家の将来の行動を予測するシステムである。
イスラエルは、自国の息のかかったグロッシー事務総長から得た「IAEA」によるイランの核査察データに「モザイク」を適用して、イランが近い将来核兵器を開発する意図を持つのかどうか予測したのだ。この結果が6月初旬に出た。それは、数か月以内にイランは核武装するという結果だった。イスラエルのイラン攻撃は、イランが実際に核兵器の開発を意図しているという事実に基づく証拠を基礎にはしていない。AIの予測データに基づくものだった。
もちろん、イスラエルがこのようなことを根拠にしていることは、イランも承知している。日本では報道されていないが、イランは自分たちは核兵器開発の意図はなく、AIの予測は間違いであると主張している。事実、同じ予測アルゴリズムを使った「ラベンダー」はあまりにエラーが多いので、「モザイク」もどこまで当てになるのか保証の限りではない。
「12日間戦争」の結果と展望
これがイスラエルがイラン攻撃に踏み切った根拠である。確かな根拠ではなかったとしか言いようがない。この記事は6月26日に書いているが、いまのところイスラエルとイランとの停戦は維持されている模様だ。
トランプが「12日間戦争」と呼び、アメリカのイラン攻撃で停戦が成立したこの戦争がもたらした結果はどうなのだろうか?
その結果は決して芳しいものではない。将来の危機拡大の危険性は高まったかもしれない。この戦争の結果を各国に分けて見てみる。
<アメリカ>
トランプは停戦にこぎつけたものの、国内のトランプ支持者の一部はアメリカの安全保障上の脅威もないのに、イランを攻撃したことに激怒している。共和党内から、犯罪者であるネタニヤフを拘束し、「国際刑事裁判所(ICC)」に突き出すべきだという意見すら出ている。
また、イランという主権国家を核兵器開発という根拠のない疑惑でいきなり攻撃したトランプのアメリカは、国際的に「ならず者国家」として認定され、日本、韓国、台湾など東アジアの同盟国からも警戒されるようになった。今後アメリカの信頼度の低下は、米国債とドルの信任をさらに低下させる可能性がある。
<イスラエル>
イスラエルは軍事的にも経済的に予想をはるかに越える打撃を受けた。経済が回復する可能性はまったく見えない。イランによる軍事基地の攻撃で、イスラエル軍も疲弊している。極右の党派がネタニヤフ政権を離れると政権が崩壊し、その後イスラエルは大きな混乱状態に陥る可能性が大きい。これを回避するためには、ネタニヤフはとにかく戦争を継続する他はない。イランとの停戦も早期に破り、攻撃を再開する可能性がある。







