停戦の仲介をトランプに依頼したネタニヤフ
では、どうやって停戦までこぎつけたのだろうか?
実はトランプ政権のイラン攻撃が実施された直後、停戦の仲介をトランプに依頼したのはイスラエルのネタニヤフ首相だったようだ。アメリカのイラン攻撃直後、イギリスの元外交官でイスラエルとパレスチナの和解に向けた外交交渉を担当し、MI6のエージェントでもあったアリスター・クルックは、ユーチューブのライブインタビューでイスラエルが停戦の仲介をトランプ政権に依頼したことを明かした。その背景は次のようなものだった。
イスラエルには、イラン攻撃の4つの目標があった。
1. イランの核開発能力を破壊する
2. イランの体制転換
3. イランの軍事指導者の暗殺
4. イランの無条件降伏
これらの目標で達成できたのは(3)のイランの軍事指導者の暗殺だけだった。(1)の核開発の能力を破壊するためには、空爆だけでは不可能で地上軍の導入が必要となることがはっきりした。これができなければ、イランは核武装し、イスラエルの脅威は増大する結果になる。
さらに攻撃の後、イランの国民は現体制に結集した。体制転換は完全に不可能でであることが分かった。そして4.のイランの無条件降伏だが、これも土台不可能であることがはっきりした。
一方、国際世論は圧倒的にイランに有利になった。イスラエルとアメリカへの批判が殺到した。イランは国際法を順守した対応をすることで、影響力を拡大しつつある。BRICS諸国とグローバルサウスはすべてイランの支持に回った。近い将来、パキスタンや北朝鮮などの核保有国から実質的な核兵器支援も期待できる状況になった。
他方イスラエルは、厳しい状況に追い詰められていた。攻撃が実施された6月13日からしばらくは、イスラエルは優勢を維持していた。イラン西部からテヘランにかけての地域の制空権は掌握しており、優勢に戦争を展開していた。しかし、18日以降になるとイランは破壊された防空システムを再建し、イスラエルの攻撃を撃退できるようになった。
またイスラエルでは、「アイアンドーム」などの迎撃ミサイルが枯渇し始めた。一方イランは、極超音速ミサイルなど破壊力の大きいミサイルを導入し、イスラエルの被害は一層大きくなっていた。イスラエル政府は死者は29人しかいないと発表しているが、実際は数百人から千名を越える死者が出ていると報道されている。イスラエル経済の中心であるテルアビブとハイファの中心部は壊滅的な打撃を受け、イスラエル経済は実質的に機能しなくなっていた。
アリスター・クルックによると、このような状況にイスラエルは参り、戦争の継続が困難になっていたという。この結果イスラエルは、イラン攻撃を終えたばかりのトランプ政権に停戦の仲介を依頼したようだ。他方イランは、イスラエルが攻撃停止するのであればいつでも停戦を受け入れるとしていた。
そもそも、なぜイスラエルはイランを攻撃したのか?
これが日本では報道されていない停戦までの経緯だが、そもそもイスラエルはなぜイラン攻撃を実施したのだろうか?
イランが核兵器を開発していないことは何年も前から明らかになっていた。今年の3月、CIAやFBIを始め、18の情報機関を統括する国家情報局長官のトゥルシー・ガバードは上院の公聴会で、イランが核兵器を開発している証拠はまったくないと証言していた。また「国際原子力機関(IAEA)」のグロッシー事務局長もイランの核兵器開発疑惑を強く否定していた。
イランは「核拡散防止条約(NPT)」の署名国である。この国際条約に署名した国々は核兵器の開発を断念しながらも、核の平和利用の権利が保証される。署名国の核関連施設には「IAEA」の査察官が常駐し、核兵器の開発が行われていないかどうか監視される。署名国であるイランは、すでに何年も前から「IAEA」に監視され、核兵器の開発はしていないことははっきりしていた。
そうした状況なのに、なぜイスラエルはイランが核兵器を開発していると結論したのだろうか?大きな疑問が残る。







