世界経済では「バブル・サイクル」が繰り返されてきました。日本でも1980年代後半のバブル崩壊後、「失われた30年」を経験し、政府日銀は長年にわたる大規模緩和を実施。その結果、東京の中古マンション平均価格が1億円を超え、株価もバブル期のピークを上回るなど、再び資産価格の高騰が始まっています。しかし今回のバブルには、物価高と同時進行する「異例」の形態や、外国マネー主導という40年前とはまったく異なる特徴があります。果たしてこの異例のバブルは、どこまで膨らむのでしょうか。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年10月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
日本にもバブルの兆候
世界には「バブル・サイクル(バブルの循環)」の存在が確認されています。一度バブルが生じ、これが弾けると経済は大きく落ち込み、負担が大きくなるため、政策面から再び大規模緩和がなされ、これが次のバブルを醸成するためです。
今日の日本では80年代後半の巨大バブルが弾けて以来、「失われた30年」を経験。その間、輸出で稼がざるを得なくなり、大きな貿易黒字を抱える中で円高が進行、円高とデフレがかさなり、政府日銀は大規模なリフレ政策をとりました。その典型がアベノミクスで、黒田日銀の異次元緩和を、これに続く植田日銀も継承しました。
この異次元緩和を長年続ける中で、日本でも忘れかけていた「バブル」の兆候が表れるようになりました。特に不動産価格の上昇が顕著になり、東京では中古マンションも平均価格が1億円を超えました。また株価も一時バブル期のピークをさらに17%上回り、最高値を更新しました。そして金価格は1グラム2万円を超える空前の高値を付けています。
インフレ下の資産バブル
今回の資産価格上昇が「バブル」になるとすれば、80年代後半のそれとは異なる形で進行しています。これまでのバブルは、一般財、つまりモノの値段が上がらない中で、投資マネーが値上がり期待の大きい不動産や株などに集中投下されて起こりました。かつてはオランダで珍しい品種のチューリップの球根に投機資金が集中してバブル化したこともありました。
40年前の日本ではプラザ合意後の大幅な円高とディスインフレのもとで大規模緩和がなされ、その中で資金が潤沢な中、企業が中心になって借り入れにより、価格上昇が期待される不動産や株の買いアサリを進めました。つまり信用の膨張で資産バブルが膨れ上がりました。
今日の日本ではモノの価格が先行して上昇、つまりインフレが進行する中で資産価格が上昇する「異例」の形になっています。国内の投資マネーは財や設備に向かい、国産バブルの傾向は限られているのですが、円安が大きく進んだことから、中国や欧米など海外の投資マネーが自国通貨でみれば割安となった日本の不動産や株を買い集めています。この点が40年前と大きく異なります。
1億円超えの中古マンション
この3年あまり、一般の物価が3%以上の高い上昇を続け、中でもコメの価格が一時2倍になるなど、物価高に目が向いていますが、その間、知らぬ間に不動産価格が上昇を続けています。
東京都内の新築マンションの価格は平均で1憶8,000万円に、中古マンションでも1億円を超えてきました。年収200万円の非正規労働者は50年間飲まず食わず、税金も払わなくても、都内の中古マンションは買えないことになります。
この都心の不動産を買いまくっているのが主に中国マネーと言われます。都心のマンションから松濤の高級不動産を買いあさり、一等地の中国化が進み、地元で警戒の動きも見られます。






