主観的確率関数とその変動
次に、主観的な確率についても見ておきましょう。
一般的に人は、めったに起きないけど、とても印象的な出来事の発生確率を高く見積もる傾向があります。
飛行機事故で死ぬ確率は統計的に極めて低いのですが、私などは毎回飛行機に乗るたびに多少の緊張を覚えます。
また、イスラエルに観光に行ってテロにあって死ぬ確率は、東京の街中で交通事故によって死ぬ確率よりもはるかに低いのですが、それでもイスラエルへの観光旅行はちょっと怖いですよね。
航空機事故やテロといった強烈な印象を伴う事象に対する主観的な発生確率の見積もりは、客観的な確率よりもかなり大きく見積もられるということです。
一般的な主観的確率関数は、図17Bの実線のように、極端な出来事の発生確率を高く見積もる傾向があると考えられています。
もっとも、必ずしもそうとは言えない事例も考えられます。
たとえば、リーマンショックの記憶が強く残っているときには、金融危機の発生に人は警戒心を解きませんが、好調な環境が何年も続くと、過去の危機は忘れられ、危機的な状況が訪れる確率をやがて無視するようになっていきます。
バブルで浮かれているときは、誰もリスクを気にしなくなるわけです。図17Bの破線で示したような心理状態にもなりうるということですね。
そして、それが次の危機を招く導火線になります。