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“誤った国策”で疲弊する運送業界、揺らぐ日本の防災安全保障=三橋貴明

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年8月22日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

運送サービス崩壊が、日本の安全保障崩壊を意味する理由とは?

2016/8/22号より

二日続けて、日本国の「安全保障」の一翼を担う運送サービスについて取り上げました。

なぜ、運送サービスが安全保障と関係があるのか。それは関係がありますよ、とくに「防災安全保障」と。大震災などの大規模自然災害が発生した際には、被災地が物資の不足に苦しみます。食料や水を手に入れることができないため、被災者は「弱い者から死んでいく」状況に陥るのです。被災者の命を助けるためにも、被災地への道路インフラを早期に復旧し、運送サービスで物資を送り込まなければなりません。

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当たり前ですが、日本政府が「予備の運送サービス」という供給能力を保持しているわけではないため、民間の運送サービスに依頼をします。

実際、東日本大震災の際には、被災者を救うために全国の運送業の方々がトラックに物資を積込み、大渋滞に苦しみつつも被災地へと徹夜の運転で向かいました。一応、政府から「手当」が出たのですが、実際にはガソリン代にもならない水準だったそうです。

それにも関わらず、全国のトラック野郎たちは東北に向かったのです。なぜか。同じ日本国民が、苦しんでいるからです。

もはや、そこに「ビジネスとしての理屈」は存在せず、あるのは国民意識(ナショナリズム)だけです。ナショナリズムに基づく、運送サービスの苦労が、被災地の「同じ国民」の苦難を和らげたのは間違いありません。すなわち、自然災害大国である我が国では、土木・建設サービス同様に、運送サービスについても「防災安全保障」を担う産業であると認識するべきなのです。

ところが、我が国は90年に物流二法を制定し、運送サービスの規制緩和を断行。理由は「運送サービスの費用を下げる」という、まさにビジネスとしての理屈によるものでした。

結果的に、運送サービスに新規参入が相次ぎ、価格も引き下げられ、98年のデフレ化以降は働き手の賃金までもが下がっていくということになりました。

そして、現在、賃金水準が低いために、人手が集まらず、サービス品質の維持が不可能になりつつあります。同時に「次の自然災害」の際に、被災地を救うパワーが落ちつつあるという話でもあるのです。すなわち、防災安全保障の弱体化です。

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