1930年代も今も、日本に決定的に不足しているのは「諜報力」です。中国の諜報力は米国の政策を180度転換させるほど強力で、クリントン政権内部にも中国のスパイがいました。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが解説します。
アメリカの政策を180度転換させた、中国の恐るべき諜報力にせまる
圧倒的に貧弱な日本のインテリジェンス能力
1945~1991年を「冷戦時代」、あるいは「米ソ二極時代」とよびます。1991年末にソ連が崩壊し、「アメリカ一極時代」がはじまりました。その「アメリカ一極時代」は08年に終わり、09年から世界は、「米中二極時代」に入っています。それで、世界中の国々は今、「アメリカにつくのがお得かな? 中国につくのがお得かな?」と悩んでいる。そして、大国間の関係は、1930年代並にコロコロ変わります。
現状はこうなのですが、1930年代も今も、日本に決定的に不足しているものがあります。諜報力。諜報といえば、第1の仕事は、「相手国の情報を知ること」です。日本は、これが全然ダメだった。
1939年8月、時の平沼総理は、予想外の「独ソ不可侵条約」締結に仰天。「欧州の天地は複雑怪奇!」という歴史的言葉を残して退陣しました。日本の総理大臣は、「翌月に世界大戦が起こる」という緊迫した状況下で、「何が起こっているかさっぱりわかんないぜ~」と世界に宣言した。
では今はどうでしょうか? 日本政府は、正確に世界情勢を把握しているでしょうか? ずっと政府高官の言動を追っていますが、「世界で起こっていることの正確な情報は入っていないだろう」と思うことがしばしばあります。
たとえば2013年12月26日の総理靖国参拝。政府は「参拝しても反対するのは中韓だけ」と考えていた。ところが実際は、中韓に加え、アメリカ、イギリス、EU、ドイツ、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが、靖国参拝を非難した。日本政府は、あまりのネガティブ反応に驚いた。私のメルマガ読者さんだけは、そうなることを知っていました。なぜなら、皆さんは、中国の「反日統一共同戦線」戦略を知っていたからです。
※「反日統一共同戦線」戦略とは? – ロシアの声
安倍総理は2015年4月、「希望の同盟演説」で日米関係を劇的に改善させました。オバマさんも、「日米関係がこれほどまでに強固だったことはかつてなかった!」とツイートしたほどです。ところが…。日本政府は翌月、「3,000人の大訪中団」を送り、日米関係を冷却化させました。これらは代表的な例ですが、とにかく、「日本政府が世界情勢をほとんど理解していない証拠」は、山ほどあります。
「正確な情報を知ること」は、とても大事。株でもFXでも、(違法ですが)インサイダー情報があれば、かならず大儲けできるでしょう? 国際政治だって同じこと。それでアメリカは、同盟国首脳たちの電話を盗聴してでも「ホントの情報」を知ろうと努力している。日本は他国が何を考えているかわからないので、やられっぱなしですね。