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確実に外れる「10月金融危機説」と、遅れて訪れる真のブラックスワン=高島康司

「バハマ文書」による世界的な資金循環の変化

このように、ドイツ銀行の問題が引き金で世界的な金融危機は起こるとする「10月金融危機説」は実現しないと見た方が妥当だ。

しかし、こうした危機説だけに注目していると、いま世界経済で実際に起こっていることを見失う恐れがある。それは、バハマにある富裕層の租税回避のデータ、「バハマ文書」の公開である。

9月22日、「ICIJ(国際調査ジャーナリスト連合)」は「バハマ文書」を公開した。これは、4月に公開されて大変な衝撃を与えた「パナマ文書」に続くものだ。公開されたデータは17万件と「パナマ文書」よりも少ないものの、それなりに大きな反響を引き起こしている。日本を含め、先進国を中心に、富裕層の資産隠しの実態が明らかになった。

アメリカをタックスヘイブンにする仕組み

「バハマ文書」の公開で、世界の富裕層はバハマをはじめ既存のタックスヘイブンから急いで逃避し、安全な地域に資産を移している。この結果、世界的な規模の資金移動が起こっている。

では、そうした資金はどこに集中しているのか?それはアメリカである。第376回の記事でも指摘したように、「バハマ文書」は「パナマ文書」同様、アメリカ国内のタックスヘイブンに世界の富裕層の資金を集中する目的で、「米開発援助庁(USAID)」につながる国策機関、「ICIJ」を通して米政府が公開したと見てよい。これがどういうことか、もう一度解説しよう。

アメリカは、2013年に「外国口座税務コンプライアンス法(FACTA)」を施行した。この法律は、アメリカの市民権を持つすべての人々に保有する金融資産を「米国税庁(IRS)」への報告を厳格に義務づけるとともに、米国内のみならず海外の銀行も、米国民の口座をすべて「米国税庁」に報告しなければならないとする法律だ。もし米国民が国外のタックスヘイブンに秘密口座を持っていることがばれると、巨額の罰金が課せられる。

それに続き、OECD(経済協力開発機構)はアメリカの「外国口座税務コンプライアンス法」にならい、「共有報告基準」を成立させた。これはタックスヘイブンの出現を防止するため、各国が銀行口座、投資信託、投資などの情報をオープンにして共有するための協定である。これまで理想的なタックスヘイブンとして見られていたシンガポールや香港を含め、97カ国が調印した。もちろん日本も調印している。

ところが、アメリカ、バーレーン、ナウル、バヌアツの4カ国だけが調印しなかった。アメリカはこの協定に入っていないのである。

アメリカ国内のタックスヘイブン

これはどういうことかというと、アメリカは「外国口座税務コンプライアンス法」を楯にして、他の国々の金融機関に口座内容などの情報をすべて開示するように求めるが、アメリカ国内の金融機関の情報は他の国に対して一切公表しないということなのだ。

つまりこれは、アメリカ国内に租税回避のための秘密口座を持っていたとしても、これを他の政府に開示する義務はないことを意味している。つまり、アメリカ国内のタックスヘイブンはまったく問題ないということだ。

いま米国内では、ネバダ州、サウスダコタ州、デラウエア州、ワイオミング州の4つの州がタックスヘイブン化している。アメリカでは租税は基本的に州政府が決定しているが、これらの州では「法人地方税」と「個人住民税」がない。さらに、破産したときに州内にある財産の差し押さえをできないようにする「倒産隔離法」なるものが存在しているところも多い。また、どの州でも簡単な用紙に記入するだけで、誰でも会社が設立できてしまう。

OECDが成立させた「共有報告基準」にアメリカが調印を拒否したことは、米政府が国内のタックスヘイブンを維持し、そこに集中した世界の富裕層の資産を米政府自らが他の国の政府の追求から守ることを宣言しているようなものである。

では、アメリカに集中した富裕層の資金はどうなるだろうか?その答えは簡単だ。ドル建てのまま株式を含め米国内の市場に投資される。

Next: ダウ高、ドル高、そして利上げへ/「本当のブラックスワン」の正体

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