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確実に外れる「10月金融危機説」と、遅れて訪れる真のブラックスワン=高島康司

ドイツ銀行の破綻を望まない米司法省

さて、このように、ドイツ銀行の経営破綻懸念は急速に消失しつつある。しかし、本当に54億ドルという制裁金の額で妥結するのだろうか?ネットでは、これは米政府が、EUを支配下におき、帝国化しつつあるドイツをたたき潰すために意図的に行った制裁なので、当初の140億ドルの制裁金は妥協しないはずだとの見解も見られる。

しかし、そうではないようだ。周知のように、2007年から2008年の金融危機の原因となったのは、破綻が確実な低所得者用の住宅ローン、「サブプライムローン」を組み込んだ金融商品、CDOが大量に出回り、それが「サブプライムローン」とともに破綻したからだ。

米司法省は、このような金融商品を販売した大手金融機関の責任を徹底的に追求し、随時巨額の制裁金を課している。制裁の対象になっている金融機関に国籍の区別はない。アメリカの大手の金融機関も制裁対象だ。以下がそのリストだ。

  • バンク・オブ・アメリカ:166億5000万ドル(1.65兆円)
  • JPモルガン・チェース:130億ドル(1.3兆円)
  • シティグループ:70億ドル(7000億円)
  • ゴールドマン・サックス:50億6000万ドル(約5500億円)
  • モルガン・スタンレー:26億ドル(2600億円)
  • AIG:16億4000万ドル(1950億円)
  • コメルツ銀行:14.5億ドル(1776億円)
  • UBS:7.99億ドル(約978億円)
  • ロイヤルバンク・オブ・スコットランド:6.34億ドル(約781億円)
  • HSBC:6.18億ドル(757億円)

アメリカの金融機関にも、巨額の制裁金が課せられていることが分かる。たしかに、いまドイツ銀行に課せられる可能性のある54億ドルという金額は高い。しかし、ゴールドマン・サックスの50億ドルとほぼ同水準の金額だ。またバンク・オブ・アメリカにいたっては、166億5000万ドルという、当初ドイツ銀行に課せられた140億ドルよりも多い。

これを見ると、米政府が帝国化するドイツを牽制するためにドイツ銀行のみをターゲットにしたとは到底言うことはできないだろう。とすれば、米司法省が140億ドルの制裁金にこだわるとは思えない。

米司法省は、当初巨額の制裁金を課すものの、最終的には交渉によって二分の一、ないしは三分の一の額まで減額するのが通例である。要するに、金融機関そのものを破綻させる意図は米司法省にはなく、高額だが支払い可能な範囲の制裁金に抑えるというのが原則のようだ。企業そのものを破綻させてしまえば、制裁金の回収も不可能になるという合理的な判断がその背景にある。

さらにEUが乗り出す

しかしそれでも、ドイツ銀行の経営が、かなり厳しい状況であることには変わりがない。近い将来、破綻の危機がないとは言い切れない状況だ。しかし、複数のシンクタンク系のレポートを読むと、EU当局による危機を回避するための対応が急ピッチで行われているのが分かる。

まず一般的な認識として、EU首脳部はドイツ銀行の破綻をドイツ一国の問題とは考えてはない。ドイツ銀行の保有するデリバティブの大きさから見て、EUを経済的に壊滅させかねない問題として捕らえており、EU総体で対応する構えだ。

これから米司法省と制裁金の減額交渉が成立し、ドイツ銀行の危機の話しもしばらくは遠のく可能性がある。しかし、それでもドイツ銀行の経営危機が進行する場合、EU当局が全面的に乗り出す準備を進めている。ギリシャを救済したような、EUを中心にECB(欧州中央銀行)とIMFを巻き込んだトロイカの体制になる可能性も指摘されている。

いずれにせよ、危機が発現していないいまの時点では、どのような対応策になるのかは分からない。しかし、強力な対応策になることは間違いないだろう。

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