国際通貨基金が公表したデータによると、世界で最も裕福な国にとって、その面積の大きさや人口の多さは必ずしも“富”を意味しないようだという分析が出ている。(『菅下清廣の”波動からみる未来予測”』菅下清廣)
※本記事は『菅下清廣の”波動からみる未来予測”』2018年9月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:菅下清廣(すぎした きよひろ)
国際金融コンサルタント、投資家、経済評論家、スガシタパートナーズ株式会社代表取締役、立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。ウォール街での経験を生かした独自の視点で相場を先読みし、日本と世界経済の未来を次々と的中させてきた「富のスペシャリスト」として名を馳せている。「経済の千里眼」との異名も。著書に『今こそ「お金」の教養を身につけなさい』ほか多数。
1人あたりの富では、米国も中国も豊かじゃない。日本に活路は?
面積や人口で「国の豊かさ」は決まらない
国際通貨基金(IMF)が今年4月に公表したデータによると、世界で最も裕福な国にとって、その面積の大きさや人口の多さは必ずしも“富”を意味しないようだという分析が出ている。
IMFは年に2度、世界の国々の経済力に関する膨大なデータを分析して、1人あたりの購買力平価ベースのGDP(国内総生産)によって世界の国・地域をランク付けしている。
それによると、
1位:カタール(12万8702ドル)
2位:マカオ(12万2489ドル)
3位:ルクセンブルグ(11万870ドル)
4位:シンガポール(9万8014ドル)
5位:アイルランド(7万9924ドル)
6位:ブルネイ(7万9726ドル)
7位:ノルウェー(7万4065ドル)
8位:アラブ首長国連邦(6万8662ドル)
9位:クウェート(6万6673ドル)
10位:香港(6万4533ドル)
ちなみに米国は12位の6万2152ドルだった。
先進国でベスト29位に入ったのは、スイス、オランダ、スウェーデン、ドイツ、台湾、オーストラリア、オーストリア、デンマーク、カナダ、ベルギー、フィンランド、28位のイギリス、29位のフランスなど。
なんとアジアでランクインしたのはシンガポール、香港、台湾のみで、中国も日本も入っていない。
「少子高齢化で日本が衰退する」は誤り
これを見ると少子高齢化で日本が衰退するという見通しは誤っている。
まさに量より質で、国土や人口に関係なく適切な政治経済政策が行われて、社会が常に改革、改善され、イノベーション(技術革新)を起せば、生産性が向上し、雇用拡大、賃金が上昇してゆくことが予測される。
経済成長に寄与する「移民受け入れ」、しかし問題も…
もちろん米国のように国土も人口も大きい国が上位に入っていることは素晴らしいが、先進国でトップ29入りしている国の多くが、過去大量の移民を受け入れている国だ。米国、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなどが上位に入っているのと符合する。
移民拡大政策は経済成長にプラス。しかしその結果、各国の社会不安は増大している。移民した人々やその子孫の多くが異文化の国に同化できず、犯罪に走ったり、テロリストになったりしているからだ。アメリカでも移民の2世、3世からホームグロウンテロリストが生まれている。
また、宗教、言語、文化の違いによって社会が分断され対立が生じている。その結果、米国や欧州では移民排せきの声が日増しに高まっている。
トランプ大統領の移民入国の禁止、制限やメキシコ国境の壁の主張などが歓迎されているゆえんである。欧州ではナショナリズムが高揚して、極右政権が誕生したりしている。
日本も次第に移民の受け入れの方向に傾いている。