3. 確定拠出年金の「実態」
先の項で、「確定拠出年金は入るべきではない」という、衝撃的な結論を述べましたが、以下で、詳細に解説していきましょう。
まず、確定拠出年金に対して、とるべきスタンスとは、
- 「個人型」は、入らない
- 「企業型」は、入らざるをえないため、最低限にする
……が基本となります。
「企業型」との付き合い方については次項で述べますので、ここでは「なぜ(個人型)確定拠出年金をオススメしないのか?」についてお話したいと思います。
急増している「運用難民」
2016年6月、年金企業連合会から発表された、「2014年度決算 確定拠出年金実態調査結果(概要)」によると、加入者が出資をしている投資商品のうち、約6割は、定期預金などの元本保証型を選択しているということが、明らかになっています。
確定拠出年金の制度上、「自分で投資商品を選ばないと始められない」というのが建前になっています。しかし、実際は本人が決められないときには、会社の方で、定期預金型や保険などの「元本保証型」の商品を選ぶよう、自動で設定していることがほとんどです。
結局のところ、確定給付年金とは「素人が金融商品の運用ができるのか?」という問題には目をつぶり、「自助努力」という大義名分を振りかざしているにすぎません。会社によっても違いますが、数十種類はある商品の中から、金融知識にとぼしいサラリーマンが、リターンも考慮した運用が組めるのかといえば、疑問が残ります。
「元本保証型」のワナ
当メルマガの読者は、確定拠出年金の「個人型には加入しない」という前提で話を進めますと、企業型に加入する際、「どの証券会社にするか?」については選ぶことができません。証券会社の選択は、すでに自分の会社が行っていますので、従業員が選択できるのは、「投資商品から」ということになります。
確定拠出年金がとり扱っている投資商品を大きく分けると、
- 元本保証型→「定期預金」「保険」など
- 元本保証のないもの→投資信託
……の2種類になります。
運用がよくわからない従業員は、元本保証型を選んでいることは、先にお話した通りですが、この「元本保証」には落とし穴があります。要は、「元本保証」といいつつ、実際は元本割れすることがあるということです。
保険は、元本保証型とされる商品の一種ですが、売却する際には、解約控除を差し引かれることがあり、それが利息を上回ると、元本割れを起こします。同じ元本保証型でも、定期預金であれば、確かに金利を上回る解約手数料をとられることはありませんが、実際には毎月運用手数料がかかっています。
じゃあ「どの商品に投資すればいいの?」と思っても、確定拠出年金の場合は、基本的に証券会社などからアドバイザーが派遣されることはありません。だからその分、費用が安く抑えられているのです。
コールセンターなどに電話しても、利回りの出るアドバイスなど期待できないでしょう。
「出口」がひとつしかない
確定拠出年金は、1度加入してしまうと、どうやっても解約することはできません。基本的に60歳まで引き出すことはできず、掛け金の支払いを止めるのがせいぜいで、しかも止めている間も手数料を払い続けなければならないという、非常にやっかいな制度です。
そもそも、投資をする際にもっとも大切なのは、資金を引き揚げるときです。投資商品を解約するタイミングを「出口」といったりしますが、たとえ投資している途中で紆余曲折があったとしても、この時点で利益が出ているかどうかで、その投資が成功したかどうかが決まります。
投資を行う際は、「出口でいくらのリターンを狙うのか?」「それを得るためには、どういった商品を選択すればいいのか?」といった、成功するための戦略を描くことが、勝率を高めることにつながります。これを「出口戦略」といいます。
多くの投資家がしのぎを削る金融業界では、プロでも思い通りにはいかないものです。ですから、出口の選択肢は多いに越したことはありません。それはたとえば「数種類の売却手段がある」「解約も可能」「インカム・ゲイン(運用益)とキャピタル・ゲイン(売却益)の両方が狙える」などです。
確定拠出年金とは、ある意味、学資保険に似た商品といえます。資金がロックされる期間が非常に長く、途中解約した場合は、後悔するような結末が待っています(学資保険については、Vol.5に詳しく説明しています)。
投資をする際に、商品を選ぶ際のポイントのひとつが「融通性」です。投資は、中長期にわたることが基本であり、その間、何が起こるかわかりません。よって、同じ掛け金を投じるのであれば、より融通性の効く商品を選ぶことが、投資で成功するコツだといえるでしょう。