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強烈なドル高・株高・金利高。「トランプラリー」はどこまで続くか?=藤本誠之

トランポノミクスのポジティブ面とネガティブ面

市場では「もしトラ」と言われていましたが、「まじトラ」となり、次期大統領にトランプ氏が決定しました。トランプ氏の主張は、“Make America great again” “Make America safe again” で、実はレーガン元大統領と同じなのです。日本で言えば田中角栄氏と同じような感覚なのだろうと思います。

田中角栄氏は土建屋でトランプ氏は不動産屋、田中角栄氏の日本列島改造計画と同様に、アメリカ大陸改造計画で、インフラ投資が全面的に出てきています。その一方、税金を下げようとしています。これらを見ると、トランプ氏は自分が儲かるように主張しているのだと思います。自分のビジネスが儲かるようにと法人税率を下げ、またインフラ投資をすれば利便性が高まり不動産の価格は当然上がります。いろいろなことを言っていますが、ビジネスを支援する政策となっており、大企業にとってはプラスと言えるかもしれません。

他にも主張の中には、1100万人の違法移民を送り返すなどという無謀なものもありますが、Dodd-Frank法を廃止するといった規制緩和も取り入れています。今まで経営の足かせとなっていた規制を緩和して、企業の成長力を高め、併せて減税も行えば従業員への配分も当然増えます。さらに従業員がもらったお金の所得税率も下げることで、アメリカの消費を拡大する方向へと動くのです。

ただし、このような主張をすると、その結果債務の増加が予想されます。減税して収入が減り、インフラ投資で支出を増やすわけで、当たり前ですが借金が増えるのです。試算ではアメリカの政府債務は10年間で5.3兆ドル増えるとされています。オバマ大統領がかなり絞ってきたので多少無駄遣いをしてもしばらくは保つでしょうが、それがなければ非常に難しい状況です。

トランポノミクスはポジティブな面も大きく、企業にとっては大幅な減税で一株利益が増えることになります。同じ利益でも減税があれば手元に残るお金が増えるわけで、当然企業業績にとってはプラスと言えます。大規模なインフラ投資も景気の回復につながり、規制緩和も企業業績にとってはプラスとなります。今のところ市場はこのプラスの面を大きく見ていると思います。

一方、ネガティブな面は、TPPに反対するといった保護主義政策です。NAFTAはよりアメリカに有利になるように再交渉し、TPP交渉は停止すると言っています。アメリカが復活するためには日本からの車を買わずにアメリカの車を買うべきだとしていて、こうした保護主義的なところは日本の自動車業界にとっては大きなマイナスとなるかもしれません。

また不法移民などの問題もあります。メキシコに工場を作りアメリカに輸出すれば、メキシコの安い労働力が使われることになります。本来はアメリカで作ればアメリカ人の雇用につながるはずですが、それが流出してしまっているので、アメリカで生産したものを買うべきだとしています。移民により安い労働力が流入するのも防ぎ、海外の工場で現地の雇用が増えるのも防ぎたい、これも保護主義的な考えで、マーケットにとってはネガティブだと思います。

さらに化石燃料重視の面もあります。トランプ氏は石炭産業を取り戻すと言って地方での得票につながったと言われています。これはクリーンエネルギーの後退につながります。CO2など環境の問題がいろいろあるものの、せっかく石炭が出ているならそれを使えば良いと言うことなのです。環境よりもアメリカの状況を一番に考えると言うのです。

Next: トランプ氏は「二期目」を考えていない可能性が高い

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