「やり過ぎ」の金融緩和は逆効果になる
経済政策は、税制や公共投資などの「財政政策」と、資金供給や政策金利などの「金融政策」との2つが柱だ。
インフレを起こしたければ、財政緩和・金融緩和を行えば、これまでの既存の理論通りに起きる。「謎だ」「実際のところ何も分からないでいる」というのは「思考停止」で、財政緩和・金融緩和が適切に行われているかを確認すれば、疑問はすぐに氷解する。
金融緩和については、20年もの超低金利に続くマイナス金利、倍々ゲームとなっている資金供給を見れば、むしろ「やり過ぎ」による逆効果の面が出てきている。つまり、預金者、年金加入者、保険加入者、金融機関らの期待すべき収益を奪うことで、景気後退、デフレ環境につながっているのだ。
また、一時は7割にも達した赤字企業、いわゆるゾンビ企業群を生存させることで、モノやサービスの供給過剰を生み、デフレ環境をつくっている。加えて、ゾンビ企業に勤める人たちには安定雇用や所得増が望めないことから、デフレ環境や、ひいては婚姻率低下と少子高齢化にも結び付いている。
とはいえ、こうした過度な金融緩和は、そもそも経済が成長していないところから、付け焼刃的に拡大・延長してきた経緯がある。
日本は本当に財政緩和を行っているのか?
問題は、本当に財政緩和を行っているかなのだ。確かにこの期間、法人税率引き下げや公共投資は行ってきた。
法人税率引き下げについては、アイルランドが世界で最も低い税率を設け、グローバル企業を誘致、それによって税収増を勝ち取った好例がある。つまり、税率を引き下げることによって景気が上向き、税収増となれば、財政緩和が効を奏したことになる。
とはいえ、日本の場合は、7割にも及ぶ企業が赤字で税金を納めず、収益増になった場合でも税収が伸びないような税率としたため、法人税収は減少した。
また、日本の場合は、法人税率引き下げと同時に消費税を導入した。これでは、財政緩和を行ったとは見なせず、税収源を企業から個人に換えたに過ぎない。日本の場合は、個人消費が経済活動の6割を占めるので、差し引きでは財政引き締めを行ったことになる。
この効果は顕著で、経済は縮小に向かい、デフレ入りとなった。7割にも及ぶ企業が赤字となったのは、引き締め政策の効果だと言える。
ここで分かるのは、財政引き締めはデフレにつながるという、西洋経済が指摘してきた理論の正しさだ。謎などない。