世界はEV(電気自動車)へ向かっている
トヨタは、次世代の自動車として、EV(電気自動車)を重視していませんでした。これは、充電に時間がかかるとか、走行距離を伸ばすにはバッテリーを増量する必要があるとか「まともな」理由からでした。
おそらくトヨタは、水素自動車が次世代の車と思ってきたのでしょう。水素自動車が排出するのは水蒸気だけなので環境に優しく、日本は技術面の蓄積も十分です。また外見上は、ほとんどガソリン車と変わらないのです。
水素を扱う技術は難しく、電気は容易です。日本の自動車産業は、水素車の技術面でリード可能な「立ち位置」にいたのです。
水素は、次世代のエネルギー源として有望なのですが、一連のEV(電気自動車)をめぐる動きをみて、危惧すべき点があります。
それは、自動車で直接「水素」を使う必要があるのかどうかという話です。難しい技術を使って、車1台1台に水素を使用するエンジンを装備する必要があると考えられてきたわけですが、発想を転換すると、違った方法も浮かび上がります。
それは、「水素は水素発電で大規模に電気をつくるために使用し、自動車ではその電気を使えばよい」という発想です。電気自動車は構造が容易で、いわば「車の家電化」です。技術的に高いレベルの「水素車」でなくても、水素発電でつくった電気で「電気自動車」として車を動かせばよいのではないかということです。
これは何か、以前の携帯からスマホへの転換とか「ルールの変更」に弱い日本勢の、過去に見たことがあるような展開になってきています。
そして、英メディアのBBCが「中国、ガソリン車やディーゼル車の生産・販売禁止を検討」と報じています。
中国は2025年までに自動車販売の少なくとも5分の1を、電気自動車やプラグインハイブリッド車(PHV)にする目標を掲げている。
すでに英国とフランスが、環境汚染対策や二酸化炭素の排出量削減などを目指し、2040年までにガソリン車とディーゼル車の生産・販売を禁止する計画を発表している。
こうした環境に関する取り組みは、前倒しされることも常です。そして、中国は、電気自動車のバッテリーの量産が得意です。まるで、点と線が織りなされているかのようです。
もちろん目的は環境保全ですが、これによってEV(電気自動車)では、日本の強みが失われる可能性があります。日本勢が「大きな衝撃」を受けることになるのは、間違いありません。