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第二次朝鮮戦争を引き起こす、中国「人民元建て原油先物取引」の衝撃=高島康司

一触即発のゴラン高原

他方トランプ政権は、サウジアラビアを盟主とする中東版NATOとなる集団安全保障機構を立ち上げ、この地域におけるアメリカ中心の勢力維持を図ったが、うまく行っているとはいえない。ロシアとイランの影響力の拡大には抗しきれず、サウジアラビアでさえ、長年の宿敵であるイランとの関係改善を模索せざるを得ない状況になっている。

そうした状況で新たな火種になりつつあるのは、シリア南西部にあり、イスラエルと国境を接しているゴラン高原である。ここはもともとシリア領だったが、1967年の6日間戦争でイスラエルが占領した地域だ。シリアはゴラン高原の所有権を主張し、イスラエルと緊張した関係が続いている。現在は国連のPKO部隊が駐留しており、1996年から2013年まで、陸上自衛隊も派遣されていた。

このような状況のなか、2015年、ゴラン高原で巨大な油田が発見された。油田の規模はサウジアラビアに次ぐ大きさになるとも見られている。原油を産出しないイスラエルにとっては、この油田の所有は死活問題となる。他方、イスラエルに敵対的なアサド政権の存続が決まったシリアも、領土返還の要求を強めている。

そのようななか、ゴラン高原の周辺地域には、イランが支援する武装組織のヒズボラが、ミサイル組み立て基地をはじめ、いくつかの軍事拠点を建設している。これは、対岸のイスラエルにとっては大きな脅威となる。イスラエルの先制攻撃、ないしはヒズボラのミサイル攻撃から、シリアで新たな戦端が切られる可能性が高くなっている。

こうした緊張した状況になっているのも、シリア内戦ではロシアとイランが勝利した結果、この地域におけるアメリカの影響力が決定的に弱くなっていることの証拠だ。

アメリカ覇権にとどめを刺す決済通貨としての人民元

こうした状況で、早ければ年内にも開始されるのが香港原油先物取引である。この取引で販売される原油の決済通貨は人民元になる。

すでにシリアにおけるイランとロシアの影響力の拡大を見てイラン側に寝返ったカタールは、早くも2014年に国内に人民元の取引所を開設し、人民元建て決済が可能となる状況になっていた。

だがこの取引所はカタールの中国向け原油のみが対象で、他の地域への輸出には依然としてドルが決済通貨として使われた。そうした限界もあり、カタールの人民元専用の取引所における決済価格は、原油価格全体の決定に影響を与えるほどの規模にはなっていない。これはいわば、お得意様である中国に便宜を図った処置だった。

ところが、今回香港で開始が決定した人民元建て原油先物取引は、原油価格全体の標準的な決済通貨が将来的には人民元になる可能性を強く示唆している。これが、ドル基軸通貨体制を前提に成立しているアメリカ覇権の凋落を、一気に加速させることにもなりかねない。

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そしてこれこそ、北朝鮮を軍事的に攻撃せざるを得ない状況にいまアメリカを追い込んでいるもっとも重要な要因なのだ。これがどういうことなのか、次回配信予定の後編でさらに詳しく解説する。

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※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2017年9月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ(2017年9月22日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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