ロゴフ教授「キャッシュレス社会が不法移民増加を阻止する」
もう1つ、「ダボス会議」でのロゴフ教授の主張をご紹介します。この人物については当メルマガでも過去に何度も解説してきました。来日もしていますし、日銀で講演もしています。
※Kenneth Rogoff: Why we need a ‘less-cash society’
タイトルは「現金紙幣の少ない社会にすべき理由」といった意味で、この記事のポイントは以下になります。
毎年毎年、数十兆円に相当する米ドルが発行されている。主要国家の中央銀行がペーパーマネーを世界中に氾濫させている。その大半は100ドル紙幣(日本円換算で1万円強)である。
米国国民1人当たりの保有現金は4200ドルで、その8割が100ドル紙幣。日本の場合、国民1人当たりの保有現金は7000ドルで、その9割程度が1万円札だ。この高額紙幣が、違法な闇経済の成長を促している。
完全なキャッシュレス社会は可能だとは思わないし、すぐには実現しないと考えているが、現金紙幣を減らすような社会は可能だと考える。電子カード、電子送金、携帯電話支払いの増加に伴い、現金紙幣の使用はこのところずっと減っており、特に巨額取引においては減少している。
中央銀行の調査では、一般市民、一般ビジネスで高額紙幣を保有したり使用する比率は減少している。
現金には保有者の名前が記載されておらず、高額紙幣は犯罪に使用されやすい。100万ドルを100ドル紙幣で運搬・保有するにはブリーフケースで充分だし、同じく100万ドルを500ユーロ紙幣にすれば財布で持ち運びできる。
企業においては、登録されていない労働者を雇用する場合に現金支払いを利用している。これは不法移民増加の大きな要因だが、現金紙幣を減らすことで鉄条網より人道的な移民制限を行えるのだ。
ECBは最近、500ユーロ紙幣の廃止を公表している。またギリシャやイタリアでは、一般的な日常必要品の購入で使用できる上限額を決めて、現金紙幣の使用を減らす努力をしている。