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忠実義務を果たした貴乃花親方と「隠蔽大国」の象徴としての日本相撲協会=近藤駿介

貴乃花親方は「忠実義務」に反していない

今回、相撲協会が貴乃花親方に対して理事解任という処分を下したのは、貴乃花親方の一連の行動が理事としての「忠実義務」に違反しているという理由からである。

さらに相撲協会が「忠実義務違反」に該当する行為だとして挙げているのは、貴乃花親方が巡業部長でありながら秋巡業中の昨年10月下旬に起きた事件を協会へ報告する義務を怠ったことと、協会の危機管理委員会が要請した被害者で弟子の貴ノ岩への聴取協力を再三拒むなどの一連の言動によって、騒動を長期化、深刻化させたという2点である。

一般的に取締役は会社に対して「忠実義務」を負っているが、それと同様に、一般企業の取締役に相当する相撲協会の理事である貴乃花親方もまた「忠実義務」を負っているとはいえる。

しかし、「忠実義務」を負う前提となるのは法令が遵守されていることである。組織が違法行為に関与しそれを隠蔽する可能性がある場合にまで「忠実義務」が負わせられることはないはずである。役員や理事が「忠実義務」を負っているがために違法行為を黙認せざる得ない状況に陥るとしたら、日本は隠蔽天国になってしまう。

また、理事や取締役が「忠実義務」を負っているのは、理事会や取締役会に対してではなく、株主やステークホルダーに対してである。理事や取締役が株主やステークホルダーに対して「忠実義務」を負うことによって、組織の違法行為等に対する監視力が担保されるのである。

折しも、消費者庁は日本を代表するような大企業でデータ改ざん等の違法行為が頻発したことを受け内部通報制度を強化し、不正を告発しやすい体制を整える方向に動き出している。

その中では通報者が嫌がらせなどの不利益を被らないよう、法律で守る対象を現在の従業員から「役員」「退職者」に広げられることになっている。つまり、取締役や理事は、会社が不都合な真実を隠蔽する場合には「忠実義務」に縛られることはないということである。

内部通報制度は内部告発が原則となっているが、情報通報者が違法行為があると信じるに足る相当な理由があり、かつ、労務提供先に通報すれば不利益な取り扱いがされる可能性がある、証拠隠滅が図られる可能性がある、労務提供先から通報するなと要求されたような場合には外部告発も認められている

今回の日馬富士による暴行事件に照らし合わせてみると、まず暴行という違法行為があったことは紛れもない事実である。

さらに、貴乃花親方が貴ノ岩の怪我の状況などから暴行などの不法行為が行われた可能性を認識するとともに、相撲協会に報告した場合に事実を隠蔽されたり、自らが不利益を被る可能性を感じていたとしたら、法の精神から言って相撲協会に報告するより先に警察に被害届を出すという外部告発に踏み切ったことは「忠実義務」に違反する行為とは言えない

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