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農協・協同組合は悪なのか?「協同組合」の歴史と継時的な意味をひも解いてみた

「協同組合」の歴史と継時的な意味とは

というわけで、改めて「協同組合」の歴史と継時的な意味をひも解いてみたい。

世界史上初の成功した「協同組合」は、産業革命後のイギリスで誕生した。産業革命により工場における大量生産が主流となったイギリスでは、製造業に携わる労働者が劣悪な雇用環境と貧困に喘いでいた。さらに、労働者は日常的に購入する食料や衣類など、生活必需品の品質の悪化や価格高騰に悩まされていたのである。

1844年12月21日、ランカシャーのロッチデールに「個別の労働者の購買力」を統合することでバイイングパワーを高め、大手小売商に対抗する「生活協同組合」の店舗が開かれた。協同組合運動の先駆的存在となった「ロッチデール先駆者協同組合」の誕生である。

ロッチデール先駆者組合は、出資した組合員の「社会的・知的向上」「一人一票による民主的な運営」「取引高に応じた剰余金の分配」を標榜。「利益」ではなく「組合員の共通目的」の達成を追求する協同組合が、ここに誕生した。

ICA(国際協同組合同盟)は、協同組合を以下の通り定義している。「協同組合とは、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織である」

ちなみに、協同組合とNPOは、共に営利を追求しない組織体という点は似ている。違いは、協同組合の目的が「組合員の生活向上」であるのに対し、NPOは「公益」であることだ。

さて、ロッチデールは「生活協同組合」であるが、農業協同組合の元祖は何であろうか。ズバリ、ドイツのライファイゼン信用組合である。

ライファイゼンとは、19世紀にドイツのライン州の農村で官選尊重を務めていた人物だ。当時のドイツの農村は、資本主義経済や市場原理主義の影響で窮乏化が進み、農民の没落が著しかったのである。

ドイツの農村で農民を苦しめていたのは「高利貸」であった。高利貸は農民を新事業(酪農など)に誘い、おカネを貸し付け、返済できなくなると容赦なく財産を取り上げ、私腹を肥やしていった。

ライファイゼンは窮乏する農民を救うため、協会の教区ごとに貯蓄組合を創設。組合から低利融資を行うことで、農民の高利貸依存を断ち切ろうとしたのである。

「市場原理」ではなく、互いに負担を分かち合う「相互扶助」により、豊かな生活を目指す。ライファイゼン型の農村信用組合はドイツ全土に普及し、穀物の販売や肥料の共同購入などを目的とした協同組合も作られるようになっていった。農民の生産力と購買力を束ねることで、大資本に対抗するという発想の「農業協同組合」の誕生である。

現在の日本の農協にしても、大資本の「市場原理」に各農民が対抗し、自らの豊かな生活を実現するために組織されたのである。農協が信用事業(農林中金)を行っていることを不思議に思う方がいるかも知れないが、そもそも農協とは高利貸に対抗し、低金利のファイナンスを行うために誕生したのである。

さらに、農業とは国家の食料安全保障と密接に関係する産業分野になる。農協「改革」の問題は、個々の農家の生活の豊かさ追求に加え、日本国民全体にとって、「安全で品質がいい食料を、継続的に安価で入手することができるのか」と関わっている問題なのである。

政府の規制改革会議を中心とする「農協改革」の議論では、組合の意義や食料安全保障の問題が全く話されていない。その時点で、根底から間違えているとしか表現のしようがないのだ。

週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.315より抜粋

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