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為替市場、黒田発言の影響はあるが重要なのは米経済の動向

6月10日に行われた衆院財務金融委員会での日銀、黒田総裁の「これ以上の円安はなさそう」という趣旨の発言を受け、ドル円相場は一気に122円台へ円高が進みました。そんな中、『億の近道』にコラムを寄せる式町みどりさんは、この発言を受け、調整相場が続く可能性はあるが、依然として重要なポイントは米経済の動向と語ります。

為替市場動向~波乱の債券市場にご注意?~

世界の債券市場で再び、長期金利の上昇が目立ってきました。動きの中心になっているのは、年内利上げの観測が高まってきた米国と、QE開始後に金利急低下があった欧州金利、特にドイツ金利の急反発です。双方の長期金利は、相互に影響し合い、変動率を高め、株式市場や為替市場に影響を与えています。

6月5日に発表された米国の5月雇用統計が、予想範囲の上限に近い強い数字だったため、米債10年物利回りは、2.30台から2.40%へと上昇。 一方、ドイツ国債10年物は、4月につけた最低水準0.07%から5月初旬には0.8%台まで急反発。その後は低下したものの、先週行われた欧州中銀理事会後の会見で、ドラギ総裁の「(金利の)ボラティリティには慣れておく必要がある」発言が、金利上昇容認と市場から解釈され、直近では0.94%まで上昇。1%台乗せもあるのでは?との声も出ています。

この水準は、量的緩和策が発表される以前、昨年秋の水準です。ドイツ金利の上昇が米国金利上昇を上回っているため、米独金利差が大きく縮小しました。

通貨ユーロは主に、米欧の金利差や、ギリシャ問題の進展の如何により上下する展開です。6月月初からのユーロの対ドル相場のレンジは、1.08後半~1.13後半で、5月の大きなレンジを抜けず、やや神経質な動きが続いています。

一方、長期金利の上昇は、金融相場を囃して大きく上昇した欧州株式市場に冷や水をかけている状態です。

脱ディスインフレを目指した量的緩和策は3月に実施になりましたが、発表当時の1月から起こっていたユーロ安効果や最近の原油価格反発により物価指数に改善が見られたことから、量的緩和の早期終了→長期金利上昇の連想に繋がっているようです。早期に長期金利が上昇してしまえば、金融政策を通じての効果は少なくなりかねません。

先日の欧州中銀理事会後の会見でも既に発表した政策は完全に遂行すると改めて確認しており、毎月600億ユーロの資産購入は当分の間続行されるものと思います。このところの金利上昇の動きは、徹底した量的緩和の実施を予想した国債買い、ユーロ売りの投機的なポジションが膨れ上がったために起こった反動とも言われます。
また、量的緩和による中央銀行の大量の債券買いにより、債券市場の流動性は低くなっていることも、変動率を上げる要因ではないかと推察します。

一方、ギリシャ支援問題が重大な局面にきています。ギリシャの資金繰りは非常にひっ迫していると伝わっており、デフォルトリスクの高まりが心配されています。

「合意は間近」というコメントも関係者発言としてニュースを見ることも多くなりました。それは「まじか?」と聞きたくなるほど、双方から出される妥協案の溝は深い印象です。追い詰められても、ギリシャ政府は自らのデフォルトを盾にして、大変「強気」な交渉姿勢を続けているように見受けられます。哲学の違いかもしれません。

いずれにしろ、来週のEU財務相会議の前までに、支援問題についての合意が期待されます。6月末には、EMUの支援計画が終了するので、それまでの合意が必要です。

また、7月、8月には欧州中銀が保有するギリシャ国債が満期となり、合意なければ新規国債が量的緩和の一環として購入されないことになります。今週来週中のギリシャと債権団の交渉が注目されます。

Next: 黒田総裁の牽制的な発言も注視すべきは米経済の動向

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