物価上昇に耐えられない消費者
では、一旦は高まりかけていた物価が、なぜ途中で頓挫してしまったのでしょうか。
原因は、恐らく消費者の購買力が物価上昇によって低下し、これが需要減退をもたらし、企業の価格引き上げを困難にした可能性があります。
実際、今年の1月・2月は生鮮食品の価格が急騰したこともあり、物価上昇率の上昇から、実質賃金と実質消費が圧迫されました。
もともと賃金上昇が限られているところへ、物価が上昇すれば、それだけ実質購買力が低下するので、消費は落ちます。
一時的に貯蓄の取り崩しで対応はできますが、貯蓄が減れば先行き不安になって、後になって消費が落ちることになります。
今年の1月は物価上昇の中でも消費は一時的に増えたのですが、その分だけ貯蓄が減り、2月・3月と消費は実質でまたマイナスとなりました。
賃金は上がらない…
厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、昨年の所定内給与は、名目でも0.3%から0.4%の増加に留まっていました。
企業のコスト管理が厳しくなって、残業代も増えなくなったので、給与の増加はボーナスに頼らざるを得なくなっていました。そのボーナスが企業収益の好調のわりに渋く、今年の春闘も昨年を0.2%から0.3%上回る程度だったようです。
名目での賃金が1%も増えない中で、税や社会保険料負担が年々高まり、それらを差し引いた後の可処分所得はさらに低く、名目でもほとんど増えていません。
そこへ物価が上がれば、それだけ購買力が低下して消費を減らさざるを得なくなります。特に、昨今は生鮮食品や電気ガスなど、生活に欠かせないものが値上がりしたので、余計に消費を圧迫しました。