イスラエルのメディアが伝える合意内容
では、なんらかの具体的な合意があったとしたのなら、それはいったいなんなのだろうか?日本のメディアではまったく報道されていない。
それが、「タイムス・オブ・イスラエル」や「ハーレツ」などのイスラエルの新聞がいっせいになんらかの合意があったことを伝えた。それは、シリアのゴラン高原に関する合意であったという。
一触即発のゴラン高原
もし本当に米露の間でこうした合意があったとするなら、それはロシアがシリアからイランの影響下にある軍事組織を排除し、それにイランが応じない場合は、ロシアはアメリカによるイランの体制転換の動きを妨害しないということを意味する。
つまり、ロシアによるイランの体制転換へのゴーサインのようなものなのだ。ちょっと複雑な話なので、順を追って説明してみよう。
まずゴラン高原だが、ここはシリア南西部にあり、イスラエルと国境を接している地域である。ここはもともとシリア領だったが、1967年の6日間戦争でイスラエルが占領した地域だ。
シリアはゴラン高原の所有権を主張し、イスラエルと緊張した関係が続いている。1974年には、両国の兵力引き離し協定が結ばれ、この実施を監視するための国連PKO部隊が駐留している。1996年から2013年まで、陸上自衛隊も派遣されていた。
そのような状況で、いまゴラン高原の周辺地域には、イランが支援する武装組織のヒズボラが、ミサイル組み立て基地をはじめ、いくつかの軍事拠点を建設している。これは、ゴラン高原からイスラエルを追い出す動きではないかとも見られている。
もしゴラン高原にイランが支援し、徹底した反イスラエルのヒズボラが侵入すると、これは対岸のイスラエルにとっては安全保障上の大きな脅威となる。そのような状況になると、ゴラン高原で新たな戦端が開かれる可能性が高くなることは間違いない。
イスラエルの生存権を認め、ヒズボラを追い出す米ロ
そして、今回の米露首脳会談では、プーチンもトランプもイスラエルの生存権を認め、イスラエルの安全保障については特別な関心を払うことが合意された。これに対しイスラエルのネタニエフ首相は、ロシアとアメリカのこのような方針に感謝の意を示した。
さて、このような文脈から、1974年の兵力引き離し協定時点の状態にゴラン高原を戻すという首脳会談で合意されたと思われる内容を見ると、その重要な意味が分かってくる。
つまり、イスラエルの安全を確保するため、ヒズボラなどイランが支援する武装勢力をゴラン高原から排除することに、ロシアとアメリカは合意したということなのだ。