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米中貿易戦争はやがて通貨戦争へ。その時、中国は4つの武器で世界覇権を握る=矢口新

欧米メディアは、米中貿易戦争に加えて「通貨戦争」かと報道している。米国圧勝という声が大きい中、中国が4つの武器を使って世界覇権を勝ち取る可能性がある。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年7月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

やがて始まる「通貨安」誘導合戦。米国と渡り合えるのは中国だけ

トランプが異例の「利上げ」批判

トランプ大統領はCNBCとのインタビューで、「強いドルは米国を不利な立場に置く」と発言。為替操作を行うことで自国(圏)を有利な立場に置いているとして中国EUを、利上げを続け自国を不利にしているとして米連銀を強く非難した。一方、4月に公表された米財務省の半期為替報告書では、日本は「監視国」に指定されており、円安への警戒が続いている

ECBはマイナス金利政策を続けている。日銀も異例の大規模緩和を継続中で、ドルとユーロや円の金利差が広がり、長期にわたってドル高が進みやすい状態となっている。

このことで、ブエノスアイレスで21日から開かれているG20財務相・中央銀行総裁会議では、ドル高是正策が争点に浮上してきた。

ムニューシン財務長官はG20会議の開幕前に一部記者団に「強いドルは米国の国益にかなう」と改めて主張、トランプ大統領の発言に「市場介入の意図はない」と指摘した。

米大統領が金融政策に口を挟むのは極めて異例だ。法律で金融政策の独立性が保証されているからだ。

とはいえ、他国の通貨政策だけを責めるよりも、自国の通貨政策の担当者をも責めた方が、フェアには聞こえるのではないか?そして、他国にはより大きなプレッシャーとなる。

景気が上向いてからも低金利を続けたFRB

サブプライムショック以降、米連銀はいち早く利下げを始めた。2008年12月から2011年11月までは世界中で唯一、米国だけがほぼゼロ金利だった。一方、2011年12月からスイス中銀が、2014年6月からはECBが、ゼロ次いでマイナス金利にまで引き下げ、米金利が欧州金利を上回るようになっていく。

そして、米連銀は2015年12月から利上げを開始、日銀は2016年1月からマイナス金利を導入した。

米連銀の利下げと資金供給を受け、米雇用市場の悪化は2009年5月をピークに改善する。また、2009年の7-9月期からは金融危機後の落ち込んだところからだとはいえ、リセッションなしの経済成長を続けている。

この雇用市場の改善も、経済成長も未だに継続中だ。つまり、米連銀は景気が上向き始めてからも、2015年12月まで史上最低金利を続けたことになる。

2010年には欧州金融危機が起き、2011年には日本を大震災が襲った。その時も、米金利は日欧の金利よりも低かった。

トランプ大統領の捉え方では「為替操作」を行っていた疑いがある。その後、明らかに米国経済の独り勝ちと言われた時期でも、米国金利は世界一低かった。そのため、多くの国々が米国より低いマイナス金利の導入を余儀なくされたという見方もできる。

Next: 効果の見えない金融政策を続ける日本は「通貨戦争」を乗り切れるか?

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