中国が隠し持つ「4つの武器」
米中貿易戦争は、米国の対中輸入額が対中輸出額の約4倍あることから、中国の受ける打撃の方が4倍大きく、米国の圧勝になるという見方がある。
一方で、中国には報復関税以外にも、4つの武器があると言われている。
※参考:4 powerful weapons China has in its arsenal to win the US-China trade war – CNBC(2018年7月20日配信)
<中国の武器その1:米国債売り>
中でも最終兵器と言われているのが、米国債の保有だ。中国が米国債を売り始めたなら、米長期金利の上昇による住宅市場や、他の長期金利高騰の影響は避けられない。
<中国の武器その2:元の切り下げ>
また、元の切り下げも選択肢となる。これまでは、元の存在感を高めたいとして、国際金融市場への配慮は欠かせなかった。ところが、米国による先制攻撃への反撃だとすれば、国際的には容認せざるを得ない。試算によれば、元が8%安くなれば、関税の悪影響を相殺できるとされている。つまり、対米黒字は減らないわけだ。
<中国の武器その3:米企業への規制強化>
中国政府による米企業への規制強化も大きな武器だ。中国経済は政府主導なので、経済戦争にも迅速に対応できる。
<中国の武器その4:米国の孤立化>
加えて、米国の孤立化だ。実際、パリ協定は米国だけが離脱した。エルサレム承認で米国は孤立した。貿易戦争は米国対世界各国の様相となっている。NATOは米国対EUだ。NAFTAは米国対カナダ、メキシコ。TPPでも米国だけが離脱した。イラン制裁は米国のゴリ押し状態で、日欧が賛同しているわけではない。
本音を隠さないトランプ
これまでの米国の戦争は基本的に同盟国を募るものだった。米国への911テロへの報復という形をとったアフガニスタン侵攻や、イラク戦争でも、米国は連合軍という形を採り、単独では攻撃しなかった。ベトナム戦争ですら、韓国などを巻き込んだ。そうすることで、米国は世界の警察、治安維持のための「正義の戦い」という建前を貫いて来た。
そんな建前を信じていた人は、ナイーブとしかいいようがない。米国に限らず、どの国でも自国の利益のために他国を侵略するなどとは公言しない。戦争でも、革命でも、武力で他を制圧する時には、「錦の御旗」を掲げるものだ。
トランプ大統領の特異なところは、本音を貫くところだ。それは一面では素晴らしい資質でもあるのだが、その本音があまりに自己中心であるために、国の内外に多くの敵をつくることとなった。米国のような一強が支持を失い、他への影響力が低下した時、これまでの歴史では、群雄割拠の戦国時代が到来した。
そんな中での貿易戦争は、相手に対する輸出の依存度だけを見て、「米国の圧勝」などという単純なものではない。中国が持つ上記4つの武器は、それぞれに強力だ。