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米中貿易戦争はやがて通貨戦争へ。その時、中国は4つの武器で世界覇権を握る=矢口新

効果が見られない金融政策を続ける日銀

金融政策にもメリハリが必要だ。米連銀の利下げ、量的緩和はスピード、規模ともにメリハリが効いていた。金融引き締めは遅すぎるきらいがあったが、現実的にインフレなき経済成長を続けてこられたのだから、最適だったと言える。

それに比べて、20年近くも超低金利政策を続けている日本は、メリハリとはほど遠く、効果があるのかどうかも判断できない状態だ。アクセルを踏みっ放しなので、外部環境が上り坂ではスピードが落ち、下り坂ではスピードが増すだけだと言える。

異次元の量的緩和はさすがに効果的だったが、消費増税がその効果を半減させた。つまり、日本の経済政策にはメリハリがなく、本当には何をしたいのかが分からないほどなのだ。

通貨戦争では「利下げ」が武器になる

欧米のメディアは、貿易戦争に加えて、通貨戦争かとコメントしている。通貨戦争とは、通貨安誘導合戦のことなので、利下げが武器だ。

では、現状の米国が利下げできるか? インフレ率、雇用市場、住宅市場などを鑑みれば、利下げは現実的ではない。また、トランプ大統領が何を言おうと、金融政策は米連銀の専権事項なのだ。

日欧はもっと無理だ。両者は既にマイナス金利で、これ以上に下げようがない。ECBは緩和政策の出口戦略を探る時期に来ていて、ここでの通貨安誘導はあり得ない。緩和政策を継続させる日銀も、マイナス金利政策の弊害が目に見えてきており、ここからの利下げによる通貨安誘導はあり得ない。

となれば、日欧には通貨戦争を遂行する力はなく、米国の要望を受け入れるか、どのようにはぐらかすかの選択肢しかない。ECBならば、緩和政策の出口戦略を速める可能性がある。日本は消費増税予定の2019年10月までは緩和を止められないと思うので、貿易面での譲歩を受け入れる可能性が浮上する。それは、日本の降伏を意味する。

米国と戦えるのは「中国」だけ

ここで、米国と通貨戦争を遂行できるのは中国だけだ。

中国には通貨安誘導合戦で金利を下げる余地が十分にあり、国内の経済状況もそれを後押しする。

もっともそうなると、通貨安により輸出が増え、関税をかけられても、対米黒字がさらに大きくなる可能性が高まることになる。

しかしそれは、中国が通貨戦争だけでなく、貿易戦争にも勝つことを意味するのではないだろうか?

Next: 米中貿易戦争の勝利者は? 米国圧勝という見方があるが…

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