最も深刻なのは日本
確かに深刻な問題を中国が抱えているのは事実だと思いますが、それは中国に限ったお話しではありません。
アメリカはほんの一握りの成功者が莫大な富をため込み、冨の集中に歯止めが効かなくなってしまいました、ポピュリズム政権の台頭はこの現象と無縁ではないと思います。中国の経済成長率は6%代半ばですが、こちらは2%台に過ぎません。
ヨーロッパはさらに低成長ですし、アメリカ同様ポピュリズムや極右の台頭によって、社会が分断されつつあります。統一通貨ユーロもいつまで持つかわかりません。
日米欧のなかで最も深刻な悩みを抱えているのは、日本かもしれません。財政は維持不能なレベルが近づいているように見えますし、経済の潜在成長率は1%ほどに過ぎません。
今のところ日米欧のなかで、日本はもっとも社会が安定しているようにみえますが、そのために競争や成長がないがしろにされてはいないでしょうか。この状態が続くようなら、安定した社会を維持しながらも、世界における経済的な地位はもっと下がっていくのかもしれません。まるで低体温症です。
中国は必ず乗り越える
このように世界を見渡してみますと、決して中国ばかりが問題を抱えているわけではなく、どの国にもそれなりの問題があることがわかります。大切なのは問題があるかどうかではなく、その問題にどう対処できるかではないでしょうか。
中国の場合、経済成長が鈍化したと言っても、まだ(公証)6%台を維持しています。しかも一党独裁ですから、日米欧と違い機敏に危機対策をとれるでしょう。
ですから、仮にシャドーバンキング問題が顕在化したとしても、例えばわが国で1990年代に起きた住専(住宅金融専門会社)問題や金融機関の不良債権問題のように、先送りしてさらに傷口を広げてしまうということはないと思います。
10年後まだ習近平さんが政権を維持しているかどうかはわかりませんが、少なくとも今の共産党の組織や人材をみれば、たいへんクレバーで危機管理に長けているようにみえます。少なくともアメリカや日本の現政権よりは。
社会保障制度は中国の将来にとって大きな問題になると思いますが、予想される成長率(4%程度か)を前提にするならば、少なくとも向こう10年以上は維持できるのではないでしょうか。
このようなことから、さまざまな問題を抱えながらも、中国は今後さらに存在感を高めると僕は思います。
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