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「トランプ政策の毒」が回って世界同時株安へ、市場は一国主義の限界を感じている=斎藤満

追加減税も金利高が効果を減殺

中間選挙での劣勢を跳ね返すべく、トランプ大統領は近々、中間層向けの所得減税を打ち出そうとしています。確かに前回の大型減税は設備投資や賃金、消費を増やす面はありましたが、同時に長期金利を3%以上に押し上げる要素にもなりました。ここからの追加減税は、景気の下支えよりも、金利の押し上げが大きく、これが株や投資コストを圧迫する面があります。

すでに失業率はベトナム戦争時以来という歴史的低水準にあり、賃金も徐々に高まり、関税の価格転嫁も指摘されるようになりました。減税による需要増効果よりも、インフレ懸念を高め、金利上昇がドル高も含めて景気や株式市場にはマイナスになる面も大きくなります。グローバル化を否定し、一国主義を貫くことのコストが、様々な面で浮上し、米国経済を圧迫する懸念を、少なくとも株式市場は感じ取り始めたことになります。

日本でも海外収益懸念

日本の株式市場にも影響が出始めています。好調が予想された7-9月の企業収益に下振れが見られ、株価を押し下げるところが少なくありません。特に中国など海外での収益下振れが見られます。政府は23日、10月の「月例経済報告」を発表しましたが、全体は10か月連続で「緩やかな回復が続いている」との判断を維持しましたが、個別では輸出と中国の見方を下方修正しています。

日本の国内市場は、米国と異なり、人口減少と労働分配率の低下による個人消費の低迷が続き、国内依存の流通業界などは苦戦が続き、企業の利益はおもに海外で稼ぐ形になっているところが少なくありません。自動車業界などがその典型です。今回は夏場の大雨、洪水、台風、大地震と、災害が続いたことも7-9月の収益を圧迫しました。

しかし、海外収益についても中国向けの半導体関連、建設機械など、中国の需要減退、米国向け輸出の伸び悩みなど、政府が認めるように、中国や輸出の環境悪化が目立つようになりました。国内市場低迷の中でも企業利益が好調を続けられた背景には、輸出などにより、海外で稼いだ利益が大きかったことがあります。

その利益の源泉である輸出や海外市場に変調が見えるようになったのも、多くはトランプ政権による中国攻撃日米通商摩擦に関わります。今年になって世界貿易が減速したのも、米国の輸入が増えなくなったことが大きく影響しています。今後は日米が直接通商交渉にあたり、その結果いかんで自動車や農産物市場が大きな影響を受けます。

Next: 本当に「日本株の調整は一時的」か? 好調要因の企業収益に陰りが…

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