ぎりぎりのところでさらなる株価暴落を防いだ
米中首脳会談に関しては、10月24日に11月末にアルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて会談する方向で調整に入っていたことが報道されており、米中首脳会談開催自体は目新しいニュースではない。
問題だったのは、10月24日の米中首脳会談調整のニュースが米国株式市場の混乱をすぐに止められなかったことだ。29日には一時NYダウは24,100$台まで下落し、高値からの下落率が約9%に達してしまった。
この29日には、米商務省が国家および経済安全保障上の懸念を理由に中国国有の新興半導体メーカー・福建省晋華集成電路への米企業による製品販売を制限すると発表した日で、米中の貿易戦争激化懸念が高まった日でもあった。
好調な経済を武器に中間選挙を乗り切るつもりだったトランプ陣営にとって、米国側のこの制裁に対して中国側が強く反発することは、米中貿易戦争激化懸念を強め、さらなる株価の下落を招きかねない事態で、許容し難いものだったことは想像に難くない。
そうしたリスクを回避するために「米国側から申し出」をして米中首脳による電話会を実現させたと考えるのが自然なのだろう。
株価操作のためだけの会談か
カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、翌2日のCNBCテレビとのインタビューで「トランプ政権が当局に対中貿易協定案の策定を指示した事実はない」と当初の報道内容を否定。
そのうえで、米中2国間の交渉の行方について「以前ほど楽観視していない」との考えを示したのは、今回の米中首脳の電話会談は株価の反発を誘うことを目的にもたれたもので、それ以外に実利がない会談だったことの証明だと思われる。
大きく上下する日米株価
米国株式市場の反発を受けて、東京株式市場も日経平均を大幅に反発し2万2,200円台を回復してきた。こうした株価の反発を受けて日米ともにボラティリティは上昇してきている。
S&P500のヒストリカルボラティリティは先週末時点で23.8%と、過去の平均12.7%の倍近い水準にあり、日経平均株価のヒストリカルボラティリティも27.3%と過去4年半ほどの平均値17.3%を10%も上回って来ている。