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中国の金融緩和は景気と株価に効果なし。人民銀の狙いと苦悩=田代尚機

それでも追加緩和に踏み切った中国の狙いとは?

それなら、なぜ金融緩和を行うのであろうか?

その点について、中国人民銀行は、ホームページ上で、「国内外の形成は依然として複雑で、中国経済の成長には依然として一定の下押し圧力がかかっている。金融政策を機動的に用いることで微調整政策を強化し、経済構造調整と経済の安定的で健康的な発展を遂げるために良好な金融環境を作り上げる必要がある」などと説明している。

もっとも重要な景気認識について、たとえば、イギリス訪問時に習近平国家主席は、「中国経済はニューノーマル時代に入っており、確かに一定の下押しリスクはあるものの、引き続き強い増勢を保つであろう。経済成長率は7%程度を保つことができ、また、7%程度の成長で十分である。中国は現在、経済成長の質を引き上げ、不均衡を解消する必要がある。そのために、中国は引き続き改革を深化させ、経済の持続的発展を確保する。最も率先してやらなければならないことは、構造調整であり、それによって、創新、消費を駆動させる」などと述べている。

李克強首相も同様の発言を繰り返している。つまり、「現在の成長率は適正の範囲内にあるが、そこから下振れする懸念がある。だから、その範囲内に成長率を留めるために微調整している」といった認識である。

金利については、「9月のCPIは1.6%上昇だが、1~9月期のGDPデフレーターは0.3%下落、9月のPPIは5.9%下落している。総合的にみると、現在の物価水準はかなり低く、それに合わせて基準金利を引き下げた」と説明している。

預金準備率については、「銀行の流動性体系に対する変化に対応するため」としている。

「外国為替市場における期待は安定しており、外国為替資金が流動性に与える影響は基本的に中立である。ただし、今後の見通しについては不透明であり、また、10月には税金支払いが集中し、銀行内における資金流動性が減少すると見られることから、銀行システムに十分な流動性を与えるために預金準備率を引き下げた」と説明している。

現政権の方針は「構造改革」金融緩和の効果は限定的に

金融改革の一貫として、また、金融システムを自由化・国際化させる一貫として、今回の利下げ、預金準備率引き下げが行われたと言わんばかりである。

はっきりしていることがある。

成長率は一時的に少しだけ戻る可能性があるが、長期的に見れば、下がり続けるだろう。金融緩和は景気減速を弱める程度のものである。

構造改革を徹底的に行うことが現政権の大方針である。

(10月24日作成、有料メルマガから一部抜粋)

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中国株投資レッスン』(2015年10月29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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