緩和しても、いまの中国株式市場には資金が流入しない
まず、金融緩和によって株式市場に資金が流れ込むかどうかであるが、今年の2月から6月にかけて小バブル発生を経験したばかりである。
その最大の要因は、金融緩和をきっかけとした信用取引の急拡大や、違法性の強い場外融資(ノンバンクを通じて資金を借り入れて株式を購入する行為)の急拡大などである。
前者は信用取引規制の強化、規制の徹底遵守により落ち着きを見せており、後者は行政指導によって9月末時点でほぼ解消している。
当局は金融緩和によって資金が必要以上に株式市場に流れ込むことを強く警戒している。今回、金融が緩和されたからと言って、こうしたルートで資金が再度株式市場に大量流入する可能性は低いであろう。
また、預金金利が低下したからと言ってどれだけの資金が株式市場に向かうであろうか?そうした資金はそれほど多くないだろう。
中国経済への影響は?
経済に与える影響はどうだろうか?
景気減速の最大の要因は不動産投資の減速であり、重厚長大産業を中心とした製造業の設備投資の減速、それに輸出の鈍化である。
不動産投資の減速は政策に起因するものである。商品住宅は投機としての需要に支えられてきた部分が大きく、国務院は2009年以来、それを抑えてきたが、昨年に入り、ようやく成果が現れたところである。
足元では価格は1線級都市を中心に下げ止まりつつあるが、在庫は今年の春以降も、高止まり状態が続いている。
銀行が不動産ローンの融資姿勢を緩めると同時に、不動産開発向けの融資も拡大するのであれば、景気は回復する可能性があるが、不動産投機が難しい中で、不動産向け融資を積極化させる銀行は少ないであろう。
重厚長大産業の不振の一端は不動産投資の不振にある。また、多くの企業が生産過剰にある中でこうした産業において設備投資は増えないし、国務院はそれを見過ごしたりしないであろう。
結局、産業向けに資金が出て行きそうなのは、インフラ建設投資であるが、すでに高水準の投資が3年以上続いており、周辺の投資が追い付かず、さらに投資を加速させるのは難しい。
国務院が最も資金を投入したいのは、戦略的新興産業であるが、こうした産業に銀行が貸せる資金量は限られている。
どうも金融を緩和しただけでは景気は回復しそうにない。それは過去5回の利下げを経ても景気が回復しないことからも明らかである。
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TS・チャイナ・リサーチの田代尚機がお届けします。中国経済や中国株投資に関するエッセイを中心に、タイムリーな投資情報、投資戦略などをお伝えします。中国株投資で資産を大きく増やしたいと考える方はもちろん、ただ中国が好きだという方も大歓迎です。