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政府の統計以上に物価は上がっている~実質値上げラッシュで国民はますます貧乏に=斎藤満

恣意的な値下げ評価

もう1つ、実感と物価統計との乖離を大きくしているのが、計算上の恣意的な値下げ評価です。

これが目立つ分野の代表として、電気製品など「教養娯楽耐久品」と自動車の価格表示です。つまり、これらは現実の価格と大きく乖離して大幅値下げの形となったり、実際に値上がりしているのに上がっていない扱いになっていて、実感より物価を押し下げる形になっています。

<パソコンの例>

その一例として、パソコンの値段を見てみましょう。私は昨年の暮れに国産T社のノート・パソコンを買い替えましたが、その時の価格は約20万円でした。総務省の消費者物価指数では足元のバソコン価格は「101.1」となっています。そのパソコンの値段は、今から19年前の2000年1月時点で「8,379」となっています。今の80倍以上です。現在20万円のパソコンは、19年前には1,600万円以上していたことになります。

もちろん、実際に2000年当時のパソコンが1,600万円もしたはずがありません。記憶では、今とあまり変わらない値段だったと思います。

同じような値段であったはずのパソコンが、消費者物価統計では19年間に価格が99%近く下がったように計上されています。これは当局がこの間のパソコンの機能向上分を価格に置き換え、実質的な値下げと判断し、19年前より99%も安い価格で計上しています。

現実の消費者は20万円を拠出してパソコンを買い、財布がそれだけ圧迫されるのですが、物価統計上は19年前に20万円だったパソコンは現在2千円ちょっとに下がったという扱いになっているのです。

<カメラの例>

同じように、カメラの価格指数は昨年12月で「102.4」となっていますが、1977年には「5,100」強となっています。現在1台2万円のカメラが、1977年当時は100万円以上したことになります。逆に言えば、1977年当時5万円のカメラは現在1千円で買えることになります。

これも現実離れしていて、カメラの値段はそんなに下がっていません。当局が画素数の高まりや機能向上分を価格に置き換え、値下げしたように表示しているだけです。

自動車の価格上昇も物価統計ではなかったことに…

やや異なりますが、現実に価格が大きく上昇しているのに、物価統計上は上がっていないのが自動車です。

今から約25年前にニューヨークでトヨタの「カムリ」を1万8千ドル(当時の為替レートで200万円弱)で買いました。最近カムリが復活してまた市場に出回っていますが、その価格は約400万円で、25年前の2倍になっています。

ところが、消費者物価指数の自動車は、1993年1月で99.8に対し、昨年12月は100.9と、ほぼ横ばいとなっています。カムリが今でも200万円で買えるならこれでも良いのですが、実際は2倍払わないと買えません。レクサスの上級車は現在1,600万円くらいしますが、25年前のレクサスはやはり今の半分くらいのコストだったと思います。

自動車の価格は明らかに上昇しています。しかし、これも自動車の機能向上分を価格評価し、現実の価格が2倍になっていても、機能が2倍になっていれば価格は横ばいという形で物価統計に計上しています。

Next: 実態と大きくズレる統計。政府が思うより国民はずっと苦しい

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