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「パリ同時多発テロ」と「9.11テロ」の共通点と相違点~楽観的すぎる市場

短期間でのIS討伐はほとんど不可能

すでにフランスでは極右政党が勢力を伸ばし、難民受け入れに反対しており、難民と市民との軋轢も危惧されます。

今後は欧州全体で難民、移民に対する反発が高まり、社会の不安定化が懸念されます。これは欧州の経済コストを高めるとともに、欧州の地盤沈下にもつながりかねません。

米国はアルカイダの討伐に10年以上をかけた末、ビン・ラディンの殺害は報じられたものの、いまだにアルカイダに手を焼いています。

フランスは米ロと協調してIS討伐を狙うでしょうが、アルカイダの例を見ても分かるように、これを短期間で壊滅することはほとんど不可能です。そもそも米国がISを管理しきれない可能性もあります。

変わる政治バランス、日本への影響は

欧州経済が疲弊し、地盤沈下が進めば、株価やユーロの下落に留まらず、世界の政治・経済バランスが変わります。目先の利益は米国の優位回復となりますが、同様にロシアが優位性を回復する可能性があります。

恐らく、ロシアは難民受け入れを拒否し、厳格で強いロシアの再建を進めると見られます。

ここに米ロが改めて対立する構図があり、その間に、日本や中国がどうかかわるかで政治バランスは変わります。日本がロシアと協力関係を強めれば、中国が孤立します。

日本が米国に遠慮してロシアと距離を保てば、ロシアは中国と接近し、中ロが日米と対立する構図になります。

およそ考えられない楽観ムード~市場急変に要注意

ISによる欧州への攻撃はこれで終わりではなく、新しい世界バランスを作り出す第一歩に過ぎない可能性があります。少なくとも欧州は長期的に大きな負担を背負い込み、地盤沈下のリスクがあります。ECBの積極対応で片付く代物ではありません。

14年前、私が「9.11」から何とか生還した際、ニューヨークでは「もう一度ニューヨークがテロに襲われたら、もうニューヨークに住んでいられなくなる」との声を聞きました。

私も一日も早く帰りたいと思いましたが、しばらくはニューヨークに飛行機に乗ってゆくことができませんでした。

パリはもちろん、欧州のほかの地域でまた大規模なテロが発生すれば、欧州での動揺は想像を絶する大きなものになります。

市場の「影響は限定的」とのリアクションは、欧米とISが早期に和解するという、およそ考えられない事態を想定しない限り、成り立たないものと思われます。

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マンさんの経済あらかると』(2015年11月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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