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経験則が通用しない12月利上げ~市場の混乱はこうして引き起こされる

市場の混乱をむしろ歓迎?

さらにユダヤ系のグループは、世界経済の混乱を利用し、そこから彼ら本位の新しい経済秩序を構築したいと考えています。

これは中東の混乱の末に、ユダヤの秩序を構築したいイスラエルの右派グループなどの行動に同様の現象が伺えます。新しい秩序を作るうえで、一旦は混乱が必要と考えます。利上げによる新興市場などの混乱は彼らには必要な過程です。

過剰流動性相場における「利上げ」の意味

利上げの影響が従来と異なるのは、昨今の世界経済が、世界規模の金融緩和を前提に成り立つ流動性相場、高度負債経済にあることです。

株式市場は業績相場ではなく、明らかに金融相場、流動性相場です。米国の景気指標が悪化すると、利上げ遅延、緩和継続期待で株価が上昇するパターンが象徴しています。米国の利上げはこの前提を崩します。

また、中国の総債務はGDPに対して300%前後に高まり、新興市場ではこれまで主要国の緩和マネーを活用して成長し、債務を拡大してきました。債務の拡大が可能な間は成長が維持できますが、債務を増やせなくなると、成長は止まります。バブル崩壊後の日本では民間債務の圧縮のもとで長期景気後退が起こりました。

欧州でもリーマン後の民間債務圧縮で経済危機が起こり、これを政府が肩代わりして債務を拡大した結果、今度はソブリン危機に陥りました。日本はソブリン危機には至らずとも、赤字の拡大で財政の機動的な対応ができなくなりました。米国の利上げは、これら債務の拡大を困難にする形で、世界経済を圧迫します。

日本にも多大な影響

こう見ると、ブレイナード理事の懸念に現実味があります。FRBの利上げによる返り血を浴びる米国自体に、それを吸収するだけの体力がなく、政策的な対処手段が限られます。

さらに、中国経済の混乱は、周辺のアジア諸国に跳ね返り、アジア全般の経済不振を招きます。輸出の半分をアジアに依存する日本は、米国以上に大きな影響を受ける面があります。

そうなると、利上げは日本にもプラスどころではなくなり、株価も下落リスクが高まります。米国の利上げによる副作用を日銀やECBがカバーするうえでは、ドル高が大きな制約になります。これ以上のドル高を煽る日銀の追加緩和はすでに困難になっています。米国にも負担が大きくなりますが、ネオコンを多く抱える共和党は、劣勢挽回、民主党の経済政策批判にも使えます。

過去の経験則は通用せず

12月にFRBが利上げに出るとすれば、近年にない形での利上げになり、過去の影響パターンは参考になりません。

巨大な流動性に支えられた金融資本市場や、新興市場にはかつてない大きな負担がかかりますが、これは現在のFRBにとって、利上げを思いとどまる要素になりにくくなっています。

FRBが予定通り、そして確信犯的に2度、3度と利上げを続ければ、世界経済はそれだけ苦しみます。そこでは金利差からの円安ではなく、リスクオフの円高が重なって日本株が大きく下落するリスクがあります。米国の利上げには細心の注意とリスク管理が必要と考えます。

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マンさんの経済あらかると』(2015年11月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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