米国の利上げ観測が高まるとともに、ドル/円で円安が進んでいます。12月利上げを確信させるほど強かった先日の雇用統計発表後には、ドル/円は123円台をつけ、直近高値の125円台に迫る勢いです。
しかし同時に、この円安トレンドを反転させるエネルギーも蓄積されつつあります。少なくとも、次の3点には要注意です。(『マンさんの経済あらかると』)
「円高転換」3つの根拠。ドル/円はそろそろ要注意水準に
円高の根拠(1)経常黒字の拡大
まずは日本の経常黒字が拡大していることです。ドルの売買には、「売りっきり」の性格のものと、いずれ買い戻しを要する「ひも付き」のものとがあります。
そして日本の経常黒字分は、前者、つまり売りっきりのドル売り要因になり、これが9月単月で約1兆5000億円、年度上半期で8兆7000億円、年率17兆円余となりました。これは前年の4倍です。
経常収支の黒字には、原油安と所得収支が年率20兆円に拡大したことが寄与しています。円建てでもドル建てでも関わりなく、誰かがドルを売って円を買うことになります。これはドルの買い戻しを必要としない片道切符のドル売りですから円高要因になります。
この本源的なドル売り要因が、年率17兆円にまで拡大してきたわけです。
いっぽう、この経常取引以外の為替売買は、米国債の売買であれ、FXでのドル買いであれ、日本で円の生活を続ける人は、いったんドルを買えば、将来これを売って円に変えなければなりません。
これをひも付きのドル買いと言います。日本人はすでに大量の円を売り、ドルや他の外貨を買いましたから、どこかで円の買い戻しが必要になるのです。
円高の根拠(2)日米政策当局の意向
これ以上円安ドル高が進まないと判断される時が、円買い戻しのタイミングとなります。その点、円安ドル高を押さえつけ、あるいは反転するリスクは少なくとも2つ、近づきつつあります。
1つは、日米政策当局の意向です。安倍政権は行き過ぎた円安は弊害が大きいと認識し、125円台が上限との意識が市場にも散見されます。
これはワシントンにもあるようで、米国政府からはG7など、機会をとらえて「ドル高は米国経済に負担」との認識が繰り返し伝えられています。
実際、製造部門や資源関係でドル高の影響が見られます。
その意向を受けて今年6月には日銀の黒田総裁が、国会でこれ以上の円安は考えにくいとクギを刺しました。この時の水準が125円台でした。
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。