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電通が目論む「情報銀行」構想の衝撃、個人情報保護よりも「活用」重視の恐ろしさ=岩田昭男

信用スコアの原点「FICOスコア」

信用スコアの原点ともいえるFICOスコアが、クレジットカード利用者のどんな点をいちばんよく見ているかというと、次のような点です。

まず、毎月、必ず一定の回数クレジットカードを延滞なく支払っているかということです。クレジットカードを使わなければ点数が高くなるかといえば逆で、低くなります。つまり、一定額をコンスタントに使っている人がいちばん点数が高いのです。

ですから、評価の基準は一般の人が考えるよりはかなり複雑なものとなっています。そして、こうした基準で振り分けられた点数が、クレジットカードの取得の可否、ローン審査における金利、賃貸住宅への入居、就職活動などにも影響を与えています。

クレジットヒストリー(返済履歴)がなければ、いくら現金を持っていても信用してもらえず、アパートの部屋は借りられません。クレジットスコアが低ければ、高いローン金利に甘んじなければならないかもしれず、就職には困難が伴うかもしれません。

ですから、アメリカの人はみな、クレジットスコアの取り扱いには注意しようと思っているのです。

リーマン・ショックをもたらした格差社会

こうして信用スコアがアメリカ社会の二極化、持てる者と持たざる者の分断をもたらし、社会の信用格差の固定化につながる恐れがあるのです。

というのも、社会の上級層は、下の層の人が上級層に上がることを好まないからです。でも、自分の家族や友人が上級層に上がることは歓迎します。ですから、よくいわれるのが、スコアの高い人を友達に持てということです。

上級層の友人の引きがあれば、上に行くのが難しいと思われた人でも、するすると出世の階段を登り、上級層の仲間入りをすることができるのです。

もうひとつの大きな問題が、サブプライム・ローンです。2007~2008年ころ、プライム層に住宅ローンを貸し付けていましたが、開拓し尽くした金融機関は、新たな顧客としてサブプライム層の人々に目をつけました。

サブプライム層の人々は、もともとローンの返済能力が低く、大きな借金はできないのですが、そういう人々に無理矢理貸し付けたために焦げ付きが出て、大きな社会問題となりました。これが引き金となってリーマン・ショックが起きて、世界的な大不況となったのです。

この一連の出来事が教えているのは、クレジットスコアによって信用力を計り、返済能力をランク付けしても、現実は必ずしも上級層の思惑通りには動かないということです。時折、大きなしっぺ返しを受け、そのたびに多くの人々が被害を被ることになります。

ただし、2008年のリーマンショックは、そのもとがFICOスコアにあることがわかっていながら、誰もそこにメスを入れようとはしませんでした。というのは、FICOスコアがアメリカの社会インフラとして定着していたからです。あたかも空気のような存在だったために、それが問題だとは考えようとしなかったのです。

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