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新型コロナウイルスの景気後退への影響

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ジョンズ・ホプキンス大学の公表によると、2020年4月3日時点での新型コロナウイルスへの感染者は世界で1,026,974人、死者は53,975人となっている。世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長が3月11日にパンデミックを宣言してから、1か月足らずで感染者が100万人を超えた。

未曾有の規模に拡大した感染症を封じ込めるべく、各国は人の出入国を厳しく制限し、食料をはじめとする物資の移動も大きな制約を受けている。国内においても程度の差こそあれ、外出が制限され、多くの商業施設が休業するなど経済活動が大きく停滞している。感染者数で中国を抜き世界1位となってしまったアメリカもその例外ではなく、3月15日、連邦準備制度理事会(FRB)はゼロ金利政策の再開に踏み切り、経済停滞への懸念がはっきり示された。実際、3月22日~28日の新規失業保険請求件数は664.8万件に上り、景気後退の兆しが明確になりつつある。

新型コロナウイルスの経済面への影響を、2008年9月のいわゆるリーマンショックと比較して評価する向きもみられる。しかし、景気への影響はさらに拡大するとの見方も増えつつあるため、過去の大きな景気後退局面も含めて振り返ってみた。

1929年の大恐慌以降、米国のGDPが2年連続で減少した局面は、1944年からの第2次世界大戦終結前後、2007年からのリーマンショック前後と計3回ある。それぞれの実質GDPの推移をみると、大恐慌期は1929年の1兆1,094億ドルから1933年の8,173億ドルへと26%、第2次世界大戦後は1944年の2兆3,516億ドルから1948年の2兆1,185億ドルへと10%それぞれ減少している。

その中でも、大恐慌期は民間投資が78%、次いで個人消費が18%減少、第2次世界大戦後は政府支出が72%減少し、それぞれの時期のGDP減少の主因となった。さらに、大恐慌期の名目GDPの中では、民間投資のうち建設が80%減少、個人消費では非耐久消費財とサービスの減少が大きく、それぞれ41%、34%、第2次世界大戦後の政府支出では国防関係費が79%減少した。

大恐慌の一因として土地、株式への過剰な個人投資が挙げられているが、GDPの減少内容はこれを反映している。また、第2次世界大戦の終結に合わせて国防関係の政府支出が減少していることは、軍需剥落が生じていたことを推察させる。合わせて大恐慌期の賃金水準が政府関連を除き、農林水産業、鉱業、製造業、卸売業、小売業、金融業など軒並み減少し、中でも建設業が75%と大きく下落しているのに対して、第2次世界大戦後は政府関連の賃金が最大で47%下落している。

一方、リーマンショック後は、個人投資が28%、輸入が18%減少したが、大恐慌期と比べると減少率は大きくない。また、賃金水準は建設業で23%下落と大きいが、第2次世界大戦後の政府関連賃金と比較すると下落率が3分の1以下となっている。GDPが減少前の水準に回復するまでの期間も4年であり、大恐慌期や第2次世界大戦後の7年と比較すると短期間である。世界経済への影響が大きく報道されたリーマンショックではあったが、過去の景気後退との比較ではさほど大きくなかったとも評価できよう。

新型コロナウイルスの景気への影響が世界的に拡大することは間違いないとしても、どのような分野に強く作用し、景気回復にどの程度の期間を必要とするのか。今後の各国の経済政策の動向に注意が必要であろう。


サンタフェ総研上席研究員 米内 修
防衛大学校卒業後、陸上自衛官として勤務。在職間、防衛大学校総合安全保障研究科後期課程を卒業し、独立行政法人大学評価・学位授与機構から博士号(安全保障学)を取得。2020年から現職。主な関心は、国際政治学、国際関係論、国際制度論。

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