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中国で盛り上がる「彼女ゲーム市場」とは何か?日本のゲームをも変える“Pay to Fun”方式=牧野武文

女性プレイヤーを急増させたゲーム『王者栄耀』

例えば、MOBA(Multiuser Online Battle Arena)と呼ばれる種類のゲームがあります。ネット経由で3人ほどのチームを組んで、別チームと闘うという内容のゲームです。チーム内では音声で指示を出し合うことができ、プレイヤーの強さとともにチームの戦略も重要になるバトルゲームです。

中国で最も人気のあるMOBAは、テンセントが2015年にリリースをした『王者栄耀』です。バトルゲームであるので、以前の感覚だと、男性向きのゲームになります。実際、小学生、中学生の男の子たちの間で大人気となり、王者栄耀を遊びたいがために親にスマホをねだる子どもたちが続出しました。あまりの過熱人気ぶりに社会問題ともなり、2016年7月にはテンセントが12歳以下の子どもは1日1時間しか遊べず、夜9時以降も遊べないという制限をする機能を追加したほどです。

『王者栄耀』がもうひとつ世間を驚かせたのは、女性プレイヤーの多さです。2017年に企鵝智酷が行った調査では、女性比率が51.7%となり、男性を上回っていたのです。なぜ、バトルゲームのような男の子向けのゲームに、多くの女性が惹かれるのでしょうか。

女性プレイヤーの80.6%が「王者栄耀が初めて遊ぶMOBA」だと答えています。ここを境に、女性が、それまで男性向けと考えられていたゲームを楽しむようになっています。

最近人気の「PUBG Mobile」や「荒野行動」は、限られた区域の中でプレイヤー同士が殺し合いをして生き残りを図るというかなり殺伐としたゲームで、さすがに男女比は7:3ほどですが、それでも以前の感覚からすると「女性が当たり前のように参加している」ゲームになっています。

女性が、癒し要素の多い放置ゲームや落ちゲーム、女性向けの恋愛シミュレーションゲームをするのは当然ですが、以前は男の子のものと見られていたMOBAやFPS(ファーストパーソン・シューティング=1人称視点のシューティング)なども楽しむようになってきています。

この変化により、ゲーム市場にとって、女性プレイヤーが重要になってきているのです。それが「彼女ゲーム市場」と呼ばれるようになっています。

女性プレイヤーを惹きつけるビジネスモデルの変化

このような変化が起きたことに大きく影響しているのが、ゲームのビジネスモデルの変化です。

スマホゲームでは「Pay to Win」という考え方が支配的でした。しかし、『王者栄耀』が登場した2015年頃から、「Pay to Fun」という考え方が登場してきました。これが女性を惹きつける要因になりました。

この2つの考え方はどう異なるのでしょうか。

日本で、スマホゲームの世界に衝撃を与えたのが、2012年に登場した「パズル&ドラゴンズ」通称「パズドラ」です。落ゲーとRPGを組み合わせるという斬新さもありましたが、注目されたのはなんと言ってもその収益性です。

レアなキャラクターが獲得できるかもしれないガチャ、あるいはスタミナを回復するには魔法石というアイテムが必要ですが、この魔法石は購入することができます。この魔法石の売上が大きかったのです。

魔法石を購入すると、ゲームを有利に進めることができます。ソーシャル的な要素もあって順位も表示されることから、パズドラに夢中になった人は魔法石を次々と購入します。これが「Pay to Win」の考え方で、収益を大きく拡大させました。

このような「Pay to Win」は、中国では2009年にテンセントが開発した「QQ農場」で成功しました。QQ農場は、PCベースのSNS「QQ」の中で遊べるウェブゲームで、畑に野菜の種を植えて、育てると収穫ができるという農場シミュレーションです。友人の畑にいき、水撒きや収穫を手伝うこともできますし、収穫した作物を盗んでしまうということもできるSNS要素が盛り込まれています。

作物を育てるには時間がかかります。早いものでも8時間、長いものでは70時間もかかるものがあります。これを待っていられない、収穫量を多くしたいという場合に、促進剤や肥料などの有料アイテムを購入することになります。この有料アイテムを買う人が多く、QQ農場は大きな収益を上げるゲームになりました。

このように、ゲームを有利に進めるために課金をする。それが「Pay to Win」です。

Next: 「Pay to Win」の成功により、スマホゲームが大きな収益をあげられる――

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