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キャッシュレス還元、ここでやめたら失策に。「7月の壁」で消費者もお店も損をする=岩田昭男

コロナ禍が中小事業者を直撃

また、MMD研究所の調査結果を見てもわかるように、支払い方法が現金からキャッシュレスに変わったという人は、全体の2割強でしかなく、8割の人は従来通り現金利用のままなのだ。

今年4月にはクレジットカード取扱高が前年比16%減というこれまでで最大の落ち込みだったことを考えると、昨年のキャッシュレス決済比率がアップしたといって単純に喜んではいられないのである。

ポイント還元事業の対象となった中小店舗(飲食店や日用雑貨店など)の多くは、今年に入ってからコロナ禍によって苦しい状況に追い込まれている。3月以降、非常事態宣言が出され、外出自粛や休業要請が行われると売り上げが激減し、営業を続けることが難しくなり、廃業する店も増えている。

したがって多くの店がポイント還元事業やキャッシュレスどころではなく、少しでも早く、十分な休業補償をしてほしいというのが本音だろう。

テイクアウトを始めた飲食店のなかには、入金が遅くなるキャッシュレスではなく、現金決済のみにしているところも少なくない。

唐突に決済手数料の開示を打ち出した経産省

さらに、ポイント還元事業が6月30日で終了したあとは、“7月の壁”が中小の小売店舗の事業者の前に立ちはだかる。

ポイント還元事業の間は特例として3.25%までに抑えられていたキャッシュレス決済の手数料料率が、従来の5〜6%まで引き上げられる、クレジットカード会社の一般の料率に戻されるのだ。

優遇策が7月から取り払われると、中小店舗の事業者には、深刻な問題となる。手数料の大幅アップでは儲けが吹き飛んでしまうので、キャッシュレスをやめて現金扱いに戻る店が続出するのでないかと心配されているのだ。

一方で、現金にはコロナウィルスが付着しているおそれがあり、現金を利用することは感染リスクを高める。そう考える人が、キャッシュレスは感染リスクを抑える清潔で安全な決済手段として再評価するようになってきた。思わぬところで、コロナの追い風が吹き出したので、これには驚いた。

そのせいで、コロナ後を考えねばならない事業者は、さらに複雑な心理状態にあるのではないか。「これから商売を続けるには、キャッシュレスでなければならない。高い手数料を払ってまで、その価値があるのか」と、事業者たちは、悩んでいる。

進むも地獄、退くも地獄なのである。

Next: そこで政府は、手数料料率の引き下げこそが、引き続きキャッシュレス化を――

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