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キャッシュレス還元、ここでやめたら失策に。「7月の壁」で消費者もお店も損をする=岩田昭男

決済事業者の手数料一覧を表示し比較させる

そこで政府は、手数料料率の引き下げこそが、引き続きキャッシュレス化を進める際の肝だと考えたのだろう。

なんと経産省は近く、キャッシュレス決済の事業者が加盟店から受け取る決済手数料の料率を開示するよう義務付ける、というのだ。

つまり、決済事業者それぞれの手数料を一覧表示し、小売店舗の経営者が決済事業者ごとの手数料料率を見比べて手数料の安い事業者を探しやすいようにするというわけだ。それによって手数料競争を起こすのが狙いだ。

決済事業者といっても、経産省が問題にしているのはクレジットカード会社の手数料だ。

というのは、ペイペイやLINEペイ、auペイなどのQRコード決済は、ポイント還元制度の実施期間中はもちろんのこと、2021年の半ば頃まで手数料を無料にしているところが多く、通常の手数料料率自体も2~3%程度で、クレジットカードに比べて低い。

だから、ポイント還元制度が終了するにあたって問題なのは、「クレジットカードの手数料料率が高すぎる」ことだというのが経産省の考えなのだ。

クレジットカードの手数料が高いワケ

経産省は、決済事業者が手数料を公開することで、加盟店が決済事業者を比較し選別することが容易になり、その結果、決済事業者間の競争が生まれ、ひいてはキャッシュレスの促進や利便性の向上など消費者のメリットにもつながる、などと説明している。

しかし、経産省のこうした考えは非常に一面的な見方であり、あまりに短絡的である。

海外では、2~3%が普通といわれる手数料料率であるが、日本だけが5~6%と突出しているのはたしかに問題である。しかし、政府のように手数料さえ下げてしまえばキャッシュレスが普及すると信じている点は、見当違いも甚だしい。

というのも、クレジットカード会社の手数料問題は、日本のクレジットカード60年の歴史がからんでおり、根が深い。ここでは細かく述べないが、問題のひとつはCAFIS(キャフィス)という日本独自の決済センターがあることだ。決済情報がCAFISを経由するために手数料が高止まりしているといわれている。

CAFISを運営するNTTデータはこの6月10日に手数料の引き下げを発表し(実施は10月から)、政府に恭順の意を示した。ありていにいってしまえば、政府に尻尾を振ったわけだが、そんなことではクレジットカードの手数料はビクともしなかった。

NTTデータが少し動いたぐらいではどうにもならないほど、システムが複雑になっているのだ。手数料には銀行の口座振替手数料やVISAやマスターカードなど国際ブランドのライセンスフィー、ネットワーク利用料、利用明細書の作成料金なども組み込まれているという。

Next: もうひとつ、クレジットカード会社を狙い撃ちするような決済手数料の開示――

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