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キャッシュレス還元、ここでやめたら失策に。「7月の壁」で消費者もお店も損をする=岩田昭男

一朝一夕では解決しない手数料問題

もうひとつ、クレジットカード会社を狙い撃ちするような決済手数料の開示義務付けに賛成できない理由がある。

それは、都会と地方の格差をより広げる懸念があることだ。

例えば、大都市の加盟店舗の手数料が標準で2%なら、地方の店舗は標準5〜6%にもなる。顧客が少なく、取扱高が小さいために、どうしても手数料が高くならざるをえないのだ。

もし地方の店舗の手数料料率を大都市の店舗並みに無理やり下げると、その店の手数料率を決定して管理している地方銀行の系列カード会社(アクワイアラー)にしわ寄せがいって、その会社が倒れてしまう危険があるという。

例えば、東京都心の小売店(パン屋)は薄利多売の店なので2%でやっており、山形の同業の小売店は5%だとする。両店ともこの手数料料率で回っているのだが、これが全国2%に統一といわれた瞬間に、東京の店はそのままで、山形の場合は、アクワイアラーの銀行系カード会社の手数料収入が半分以下に減るので、倒産の可能性も出てくるというのだ。

5%で何とか成立していたビジネスが、全国2%で一律に線引きされると崩れる地域が出てくる。手数料を考えるうえでは、こうした地域差も考えねばならない。

(政府にはそれでも構わないという意見もあるようで、クレジットカードの手数料料率が高すぎるのであれば、QRコード決済に換えればいいという意見もある。しかし、それは地方経済の現状を無視した言い方であり、強引すぎるのではないかと私はみている。60年の垢が溜まったクレジットカードの手数料問題は一朝一夕に解決するものではない)。

消費者は置いてけぼりの政府施策

このように考えると、唐突に決済手数料開示の義務付けをいい出し、手数料競争を煽ろうとする経産省の発表を歓迎することはできない。

気になるのは、これらの話の中には、消費者の姿が一向に見えないことだ。カード会社と加盟店の駆け引きだけで、消費者はまったく消えてしまっている。

経産省は冒頭で述べた「民の気持ち」を忘れているのではないか。国民が何を望んでいるかを忘れている。「カード会社の手数料が高すぎるから、ポイント事業は失敗しつつある」などとは言ってほしくない。手数料が高いことは最初からわかっていたのではないか。それよりは私は日々の暮らしを考えてほしい。

ポイントとキャッシュレスを使って、いかに便利にお得になるかにもっと力をいれてほしい。

上級国民のあなた方(官僚・政治家)には一番遠い所にあるかもしれないが、庶民が求めるのは手数料ではない。ポイント還元事業の継続であり、延長である。そして、手数料引き下げは、長期的な視野で取り組むべき問題であるだろう。

Next: 経産省がいまやるべきことは、キャッシュレスの利便性を消費者にしっかり――

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