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ドコモ完全子会社化は菅政権のご意向か。見捨てられるNTTの株主たち=栫井駿介

利益よりも政府(大株主)の意向優先か

じゃあ、なぜこんな高い価格で買ったのかというと、証券会社が関係あります。買収という行為には必ず証券会社が絡みます。当然、証券会社も儲けなければいけないので、TOBなど買収のアドバイスによって手数料を得るわけですが、その手数料体系が今回どうなってるかわかりませんが、一般的にはこの買収金額に対して何パーセントという計算方式をとります。

したがって証券会社としては、この買収金額が上がれば上がる程入ってくる手数料が多くなるということになります。私自身もその証券会社に所属していたので、そういうことがあるということは身近に感じていました。

そして、この買収価格というのは当然、いま付いてる株価も基準にはするのですが、一方でDCF法といってちょっと難しい将来の財務諸表なんかを作って、実際に金融理論に基づいて株価を計算するという方式があります。

この方式というのは、鉛筆を舐めれば実はどうにでも動かせるものなんです。そこで証券会社としては高い価格を提示して、これぐらいの価格で買っても妥当だというようなことを言って、高い価格で買い取らせたという可能性があります。

そこに対して、NTTの経営陣というのは正直、会社の利益がどうなるかというのは二の次なんです。なぜならば、自分が大株主ではないので、利益が上がろうが下がろうが知ったことかというような、極端に言えばそういったこともあるかも知れません。

それより大事な大株主様である政府の意向を汲むということが、大切だったということも考えられます。

その結果、割を食うのは残ったNTTの株主ということになって、この買収劇の損得勘定ということになるわけです。

成長も期待できない、経営陣も信用できない

さて、そのNTTが買いなのかということについてです。

出典:マネックス証券

出典:マネックス証券

過去13年くらいの業績ですが、赤が営業利益なので、こうやって見ると業績に伸びているように見えますが、年平均に直すとわずか2.68%の成長に過ぎないのです。

図体がもともと大きいのでそんなに大きな成長は望めないのですが、それにしても物足りない数字であるといえます。

大きく上昇しているところのほとんどは、実はドコモの利益の上昇によるものなのです。

この時期には4Gが普及して一気にスマホも普及して、その料金を上げてそれによって利益上乗せさせる事が出来たからここで成長したのですが、一方で今起きている事はその料金を下げさせようとしているということなので、これまでのような成長が続くとはなかなか考えにくいです。

むしろマイナス成長に転じてしまう可能性すらあります。

まして今株主をある意味で軽視するような買収劇というのをやってしまう経営陣というのは、株主としては信用が置けないのではないかと考えられます。

株価を見ましてもここ5年上がったり下がったりをほぼレンジの中で推移しているという形になっています。

今後も大きな上昇というのは見込めないと考えられます。

配当が4.42パーセントとまずまず高いですが、当然利益が減ってしまうと配当も減ってしまう可能性も十分にありますし、一見安定しているようですが、前提条件が変わってしまうとその安定が大きく崩れてしまうということもあります。

そういうことから、NTTの長期投資は私の方からは必ずしもお勧めできません。

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image by:pisaphotography / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2020年10月4日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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