日本で不動産価値の暴落が迫っている。若年層から「持ち家信仰」は消え、もはや35年ローンは馬鹿げた選択だ。3つの大きな問題も重なって、じわじわと不動産という資産の価値を絞め殺そうとしている。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
消えた「土地神話」。不動産価値を暴落させる3つの大問題
今、不気味にささやかれている問題がある。それは日本の不動産価値の暴落問題だ。日本には「土地神話」というものがあって、土地を持っていれば勝ち組だという意識が社会にあった。
しかし、1990年以後のバブル崩壊で土地は右肩上がりで価値が上昇していく資産ではなくなった。その上に、3つの大きな問題も重なって、それがじわじわと不動産という資産の価値を絞め殺そうとしている。
問題その1:少子高齢化を要因とした本物の人口減がこれから始まる
1つは少子高齢化の問題だ。日本政府は進みゆく少子高齢化を放置し続けたので、日本は地方都市から急激に人口減少が加速している。
このままで行くと2040年には地方都市の半数が消滅、2050年には国土の6割が無人になる。人のいなくなった過疎の土地は当然のことながら不動産価格は下がる。地方の不動産は「値段が付いているうちに売れ」とささやかれるようになっているのはそういうことだ。
首都圏の不動産は比較的安泰だが、それでも少子高齢化によって一部の区域からまだらに人口が減っていくことが予測されている。何しろ、東京都が2020年9月15日に出している統計を見ると、東京の人口のほぼ4分の1は高齢者なのである。
東京都の総人口:1332.7万人
65歳以上の人口:311.1万人(23.3%)
75歳以上の人口:163.9万人(12.3%)
80歳以上の人口:100.7万人(7.6%)
2020年はコロナ禍で外国人が減ったので人口が減ったように見えるのだが、そういった要因ではなく、少子高齢化を要因とした本物の人口減がこれから始まる。
大阪はどうなのか。大阪は2015年から68年ぶりに人口が減っていることが報告され、「三大都市圏で人口が最速減少するのは、大阪圏」だと識者も指摘する。
だから、今の都市部で問題になりつつあるのは「空き家」である。東京都だけで空き家は約80.5万戸もある。
問題その2:サラリーマンという生き方の終焉
2つめの社会の変化も日本に到来している。それは、今までの日本を支えてきた「サラリーマン文化」の崩壊、もっと具体的に言えば、終身雇用と年功序列の崩壊である。これが不動産の問題と直結する。
今の若年層は、終身雇用も年功序列も知らないし、そんなものはあり得ないというのが逆に常識となっている。
戦後から1980年代までのサラリーマンにとって、転職をするというのは「だらしない人間のやること」のように思われていた。ところが今や、会社が働かない中高年をリストラして放り出したい時代になっており、転職はむしろ奨励されている。
今の若年層は、もう転職するという人生設計が当たり前であり、ひとつの会社にいつまでも働き続けられるとは誰も考えていない。そう願っても、リストラされてしまうのである。
これこそが、戦後から一貫して続いて来たサラリーマンという生き方の終焉である。
その結果、考え直さなければならない重要な変化が生まれてきた。それは、「持ち家」に対するものである。サラリーマンという生き方の終わりと共に「持ち家信仰」も終わる。