fbpx

「バイデン政権」なら円高か【フィスコ・コラム】

マネーボイス 必読の記事



米大統領選が1カ月後に迫り、先行き不透明感が一層強まりそうです。メディアの情勢調査でややリードする民主党候補のバイデン前副大統領が勝利した場合、日本にとって為替は好ましくない方向に向かう可能性もあり、警戒感が強まるでしょう。


11月3日の大統領選に向け、共和党候補のトランプ大統領とバイデン氏による初の直接対決となった9月29日の候補者討論会でバイデン氏の勝利が伝えられると、金融市場では株安に振れました。同氏はやや左派的な政策を公約に掲げており、ウォール街を念頭に置いた増税を意識し株売りが先行。ドルは株安を受けリスクオフの買いにやや押し上げられましたが、その後上昇は抑制されました。


両候補の政策をみると、未曾有(みぞう)のコロナ禍で雇用情勢の改善に注力する点では一致しているものの、税制に大きな違いがみられます。トランプ氏は1期目同様に減税、対するバイデン氏は増税で財源を確保したうえで歳出を拡大していく方針です。早々と指名争いから撤退したサンダース氏など左派的な考え方にも沿う民主党の伝統的な政策と言えるでしょう。


外交に関してはトランプ氏が引き続き「アメリカ第一主義」、バイデン氏は国際協調路線への回帰を掲げています。このうち対中政策について、双方ともタカ派的であるものの、バイデン氏は国際協調の立場から関税による対立には否定的です。そのため、仮に「バイデン政権」発足の場合には、ここ数年の間にみられた通商摩擦による先行き不透明感を嫌った円買いは解消されるかもしれません。


トランプ氏は2期目の公約にもすでに着手し始めています。9月に発足したばかりの菅政権にとっては、手の内が読めるトランプ政権の方が安心感はあるでしょう。自民党と米共和党は、イギリスの保守党なども含め保守政党どうしのつながりという点からも友好関係を構築できるとみられます。トランプ氏は決して親日派ではありませんが、武器購入などに積極的だった安倍前政権のことは一応尊重し、日本に対する露骨な締め付けを控えていました。


過去の経緯からすると、やはり民主党政権の方が警戒を要すると思われます。1993-2001年のビル・クリントン政権は当時衰退ぎみだったアメリカの製造業を再生させるための通貨安政策で、95年にドル・円は79円台へと記録的な円高に振れました。そして、ドル安の後はドル高へスイッチし、資本を集めてIT産業を強化。1990年代の日本経済はクリントン政権に翻ろうされ、痛手を被ったと言えるでしょう。


2008年のリーマンショックからの再生を目指したオバマ政権も、就任後の5年間にわたり輸出倍増計画を推進。その過程で、ドル・円は最安値を更新し、2011年に75円台まで値を下げたのは記憶に新しいのではないでしょうか。日米関係のすきま風はドル・円相場の振れを増幅させます。「バイデン」政権がクリントン、オバマの両政権に倣い、コロナ禍のダメージを克服しようと考えても不思議はありません。


※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)
いま読まれてます

記事提供:
元記事を読む

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー