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報道されぬ「日本完敗」トランプとのゴルフ外交に賭けた安倍官邸の大誤算=近藤駿介

トランプにとって対日外交は「赤子の手をひねるようなもの」

首脳会談後の共同会見で、トランプ大統領は「互恵的な貿易関係を築いていきたい。平等で信頼できるアクセスが米国製品に必要であり、慢性的な貿易不均衡を是正しなければならない」と述べた。

しかし、今回の日米首脳会談では、トランプ大統領は日本側が懸念していたFTAや貿易赤字削減の具体策には触れず、会談中の「やりとりはなかった」と報じられている。

もちろん、トランプ大統領が貿易赤字問題に具体的に触れなかったのは、北朝鮮問題を最優先に考えているからではない。これは、日米間の貿易不均衡は日常的な貿易で解消するのではなく、日本に防衛装備品を購入させることで解決しようと考えているからに他ならない。

トランプ大統領だけでなく、大統領に先立って来日したイバンカ大統領補佐官に対しても日本はかなり手厚くもてなした。常に政治的な批判を浴び続けているトランプ大統領とイバンカ補佐官にとって、映画スターを迎えるような歓迎ぶりを示す日本的「お・も・て・な・し」は心強いものだったはずだ。

同時に、スターとの近い関係を自慢する一般人と同じように、嬉々としてトランプ大統領との親密さをアピールする安倍総理の振舞いを見ていて、「劇場型政治」「劇場型選挙」好きの日本を操ることは赤子の手をひねるくらい簡単なことだと感じたはずである。

日本とは全く異なる、中国のしたたかさ

「劇場型政治」「劇場型選挙」と真逆の立場にいる中国は、日本とは異なった対応をした。「国賓以上」「皇帝級」としてトランプ大統領を迎え、世界遺産である故宮を貸し切り、習近平主席夫妻自らが案内したうえ、夕食会ではトランプ大統領の孫娘のアラベラちゃんの動画を流す大サービスを行った。

4月にトランプ大統領が習近平主席を別荘「マー・ア・ラゴ」に招いて行われた初めての米中首脳会談の際、前日の夕食会に臨んでいる最中にトランプ大統領が化学兵器を使用したことを理由にシリア政府軍に対して巡航ミサイルを59発撃ち込んで見せたことを思い返すと、中国の接遇ぶりは対照的なものであった。

米中首脳会談では、北朝鮮問題に関して一切の妥協をせず、国連安全保障理事会の制裁決議の厳格な履行を続けると明言したものの、対話と交渉を通じて朝鮮半島の核問題の解決に力を尽くすという姿勢を貫き通して見せた。

4月のフロリダでの経験を活かし、米中首脳会談が平行線で終わったにも関わらず習近平主席は会談後に「35億」どころか「28兆円」規模の貿易協約締結セレモニーまでセットし、トランプ大統領に花を持たせる演出をし、中国のしたたかさを見せた。

日本では安倍総理とトランプ大統領の「蜜月関係」を歓迎する報道一色となっている。しかし、トランプ大統領が就任して真っ先に駆け付けたときの安倍総理と今の安倍総理では、トランプ大統領にとって利用価値が異なってきている可能性は否定できない。

先の10月総選挙で圧勝したとはいえ、高い支持率を誇り2021年まで総理を続けられる可能性が高いと思われていたときと比較すれば、安倍政権の安定性はかなり低くなっている

一方、10月の共産党大会で盤石の態勢を築き2期目を迎えた習近平主席は、現在最も地位が安定している政権だといえる。落ち目の安倍政権と盤石の習近平政権を天秤にかければ、トランプ大統領が今後どちらを重要視していくかは明らかである。

Next: またもや「手形」を振り出す羽目になった安倍官邸の大誤算

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